夫が味方になって、状況を理解してくれないと、元気な主婦さんの現在も未来も改善しないと思います。

 ただし、20年近く、元気な主婦さんが重い荷物を持つことを夫はずっと見ていたわけですね。その間、このことについては夫婦では何も話さなかったのでしょうか。

 元気な主婦さんは、義父母と同居ですか? もし同居なら、義母はどんな人ですか? 義父にただ従う人ですか? 内心、同情してくれそうですか? 義妹は? 理解してくれそうですか? 義父母の世話や介護に対してはどう思っているようですか?

 すみません。質問は、「荷物を持たせること」なのに、勝手にいろいろと心配しています。

 僕の思いが杞憂、案じ過ぎであればいいと思います。

 ただ、まだ体力がある元気なうちに、少しずつ周囲と話して、未来を見据えていくのがいいんじゃないかと、僕は思っているのです。

 元気な主婦さんは、相談の文章からとても前向きな人のような印象を受けました。人生をネガティブではなく、ポジティブに受け止めようとするエネルギーがあるように感じたのです。

 ですから、余計なアドバイスまでしてしまいました。

 もちろん、荷物だけではなく、世話とか介護のことを、夫や義理の家族と話すのは、大変なことです。この「対話」は、大変なエネルギーが必要です。

 でもね、僕がこの連載で繰り返し書いているように、「苦しんでいるのは自分だけじゃない」と分かると、人は少し楽になります。自分と同じ「タダの使用人扱い」されている問題に多くの人が悩み、必死に取り組んでいるんだと思うと、前向きの気持ちが生まれやすくなると僕は思っているのです。

 とりあえず、夫と話してみませんか。「案ずるより産むが易し」という諺もあります。元気な主婦さんの前向きなエネルギーで、いい方向にいくかもしれません。

 とにかく、話してみること。すべては、そこから始まると思います。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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