欧米では手術リスクが中程度の範囲まで、治療適応が広がりつつあるという。

「日本における手術とTAVIの比率はほぼ7対3ですが、将来的に適応が広がるとTAVIが5割以上になっていくと思います」(出雲医師)

 TAVIの実施施設は全国170病院に増え、心臓弁膜症の手術をおこなう主要な病院で実施している。

「術後は翌日から食事は可能で、離床してリハビリも開始できます。早く離床できることは、高齢者にとって筋力や呼吸機能を衰えさせない点でとても大事です。そしてほぼ4~5日で退院できます。これは手術の入院日数の半分程度です」(同)

 TAVIの適応は慎重に決めることが大事だと話すのは、榊原記念病院循環器内科部長の高見澤格医師だ。

「TAVIは間違いなくメリットのほうが大きいですが、患者さんの状態による適応と同時に、病変の適応も慎重に検討しておこなうべきです。たとえば弁の形によっては人工弁がうまく合わないことがありますし、石灰化が強く、硬くなりすぎた弁などは細心の注意が必要です。病変を加味して適応を決めるべきです」

 メリットが多いTAVIだが、新しい治療であるため、長期にわたる耐久性はわかっていない。

「国際的な試験で、TAVIと手術を比較した結果では、1年後の全死因死亡率はTAVIのほうが低かったと報告されています。TAVI弁の耐久性が、以前から問題となっていましたが、最近は手術で置く生体弁と遜色がないという報告もあります。しかし、まだまだ長期成績は明らかとはいえません」(高見澤医師)

 そこで18年に保険適用になった「バルブインバルブ」という治療法が注目されている。

 手術で入れた生体弁が耐用年数を超えて壊れた場合に、その部分に新たにTAVIで人工弁を入れる治療法だ。

「日本では外科手術で入れた人工弁の上から、新たに人工弁を入れることのみ適用ですが、欧米ではTAVIで入れた上からさらにTAVIで入れることが適用となっています。近い将来、この治療は日本でも適用になると思います」(出雲医師)

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