(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
『新「名医」の最新治療2020』より
『新「名医」の最新治療2020』より

 心臓の弁に障害が起きて、血液の流れが悪くなる心臓弁膜症。進行すると心不全の原因になるため、病状に応じた早急な治療が必要だ。治療の第一選択は手術だが、高齢者など手術リスクの高い患者には、身体への負担が少ないカテーテル治療が用いられることもある。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、進化する治療器具や治療法について、専門医に取材した。

【データ】心臓弁膜症かかりやすい性別や年代は?

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 正常な血液の循環を妨げる心臓弁膜症は、放置すると心臓の機能に支障をきたし、命に関わる心不全へと進行するため、適時に治療することが求められる。

 心臓弁膜症の治療の第一選択は手術だが、患者の年齢やからだの状態、他の病気があるなどの要因で、手術を受けられない場合や、手術を受けた場合に合併症が起こるリスクが高いことがある。症状が進行して心不全になると、心臓の機能を改善するために薬物療法がおこなわれるが、薬では弁の機能を元に戻す根治は見込めない。

 手術リスクが高い患者に対して、弁膜症のタイプによっては、からだへの負担が少ないカテーテルによる治療が可能だ。

 大動脈弁狭窄症に対するTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)と、僧帽弁閉鎖不全症に対するマイトラクリップ(経皮的僧帽弁形成術)という治療だ。

■治療器具が進化し 80歳から適応可能

 TAVIは、足の付け根の動脈からカテーテルを挿入して、大動脈弁まで到達させ、カテーテルの先に折りたたんで挿入してある人工弁を広げ、悪くなった大動脈弁の内側から留置する。

 開胸せずに心臓も止めないまま、2時間程度で治療が終わるため、患者への負担が少なく、術後の回復も早いのがメリットだ。手術が困難な高齢者などを中心に治療がおこなわれている。聖マリアンナ医科大学病院循環器内科准教授の出雲昌樹医師はこう話す。

「TAVIは13年の導入当初より、治療器具や人工弁の機能が進化したことで、治療成績が向上しています。手術のリスクが高い難症例だけでなく、治療の適応が拡大してきました。当初は85歳以上への適応でしたが、17年から80歳へと適応を拡大しました」

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