5.溜飲が下がる
~胃の酸っぱい液が喉元から下がってすっきり

 「溜飲(りゅういん)」とは、胃の具合が悪いことによって喉元まで酸っぱい液が上がってくることです。これが下がると胸がすっきりすることから、不平不満や恨みなどがなくなって気持ちが落ち着くことのたとえとして用いられるようになりました。

6.脈略
~血管を意味する鍼灸の用語

 もともとは、鍼灸(しんきゅう)の用語で「血が流れる血管」を意味します。体中に張り巡らされた血管の様子から転じて、物事のつながりや筋道の意味で用いられるようになりました。鍼灸では、脈の状態から体の症状を診察する脈診が行われるなど、鍼灸と脈は密接な関係にあるのです。

7.匙を投げる
~薬を調合するための匙を投げて治療を諦める

 ここでの匙(さじ)は、薬を調合するための匙をさします。治療法を見いだせない漢方医が、薬を調合する匙を投げ出して治療を諦めることを表しています。そこから転じて、物事に救済や改善の見込みがないと断念すること、前途がないとして見切りをつけることなどの意味になりました。

※漢字エンタメ誌『みんなの漢字』2020年5月号から抜粋
監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)