今も昔も特効薬をつくるのは容易ではない(イラスト/桔川伸)
今も昔も特効薬をつくるのは容易ではない(イラスト/桔川伸)

 医療やからだにまつわる言葉には、意外な由来をもつものが数多くあります。中国や西洋の言葉を転用した漢字も少なくありません。何かと健康に関する話題が増えた昨今。「この漢字ってじつはね……」と話してみるのも一興かもしれません。

*  *  *

1.看病
~仏僧が病人のために加持祈祷する意味だった

 「病気の人の世話をする」という意味で用いられるのが一般的ですが、もともとの意味は仏教において「僧が病人のために加持祈祷すること」です。奈良時代には、宮中で病気平癒を祈る「看病禅師」とよばれる僧がいたのだといいます。「看」の字は「手」と「目」の組み合わせで、「遠くを見る」「しげしげと見る」という意味があり、中国では現在も「医者に病気を診てもらう」というときに「看病」が使われています。

2.風邪
~空気の流れが体に悪い影響を与える

 中国では、古くから空気の流れが体に影響を及ぼすと考えられており、日本で病気のことを「かぜ」というようになったといわれています。そのため、もともとは呼吸器系の疾患だけでなく、腹痛や神経疾患なども含まれていました。漢字は「風」が用いられていましたが、「からだに影響を及ぼす悪い風」を意味する漢語の「風邪(ふうじゃ)」を「かぜ」と読むようになりました。

3.薬玉
~薬効のある香料を玉にして飾った

 薬玉(くすだま)は一見、薬とは関係なさそうですが、なぜ「薬」の字が用いられているのでしょうか。もともとは、5月5 日の端午の節句に邪気払いや長寿を祈って、麝香(じゃこう)、沈香(じんこう)、丁子(ちょうじ)といった薬効のある香料を玉にして錦の袋に入れ、飾り付けしたものを薬玉といいました。この形に似せて、玉を割ると中から紙吹雪や垂れ幕などが出てくる祝い用の飾り玉がつくられました。

4.十二指腸
~名前の由来は指12本分の幅と同じ長さ

 十二指腸は小腸の上部にあたり、胃とつながる部分です。名前に「十二指」とあるのは、長さが指12本を横に並べた幅(拳三つ分)と同じくらいであることに由来します。古くは、ギリシャ語の「dodekadaktylos( dodeka<12>+ daktylos<指>)」に始まるといわれています。日本では、日本初となる西洋解剖学の訳書として知られる『解体新書』でオランダ語から「十二指腸」と訳され、「其の長さ十二の指の横径の如くして」と紹介されました。

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「脈略」は「脈」にその語源が