「それだけに、結婚に対してどんな反応をするのか、楽しみなようで心配でもあった。結婚直後、ファンと集まるバーベキューに夫を誘った。そこでみんなに紹介しようと考えたのだ」

 一般人で3歳下の夫は「刺されたりしたら、どうしよう」と言っていたそうだが、結果は上々。

「いざとなったらケンカも辞さないと意気込んでいた人でさえ、初めこそ警戒していたが、実際夫に会うと、すぐに仲良くなってしまった」

 という。彼女の夫もやんちゃ系で、彼女のファンにもそういう人が多かったから、波長が合ったのだろう。そして思うに、夫を紹介したのは、これまで自分を支えてきてくれたファンの男たちへの「仁義」を通すことでもあった。

 16歳で母やきょうだいと住める家を建てたことでも知られるゴマキは、家族が大好き。ファンともそれに近い関係なのだ。

 そういう家族的なものへのこだわりこそ、元ヤンの本質であり、それは任侠の世界とも通じる。そこでは「一家」とか「親分子分」「姐さん」といった言葉が使われ、疑似家族としてのシステムや機能が成立しているからだ。

 木下については、そのこだわりがあの「出方次第でこっちも事務所総出でやりますね」というやらかし発言にもつながったわけだが――。そんな彼女が十数年にわたって人気者であり続けたのも事実だ。また、工藤静香などは新たなセレブファミリーを築き上げ、芸能界のハイクラスに君臨している。

 今の日本は個人主義志向が高まってきたとはいえ、まだまだ伝統的な家族主義への支持も根強い。そのあたりを体現するのが、元ヤン系女性タレントの健在ぶりである。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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