そのママ友は、こんな裏話も聞かせてくれた。

「先生の話を聞いて熱心にやっているママは1人か2人じゃないかな。あとは聞き流して聞いている人ばかりだよ。私だって、もらったプリントはすぐにごみ箱行きよ」

 私は毎回もらったプリントをあとで読み返せるようにと、きれいにファイリングしていた。

 そうした話を聞くほど、人が勝手に作った育児方法を忠実に守ろうとしている自分がバカらしく思えてきた。でも、すぐに幼児教室は辞めなかった。その理由は、この先、先生がどんな「トンデモ話」をしてくるかが気になったからだ。

「離乳食はおかゆのみ。私たちの祖先は米だけ食べて生活していましたので大丈夫です」

「プラスチックのおもちゃはできるだけ控えてください。木のおもちゃは温かみがあるので、子が親の愛情を感じます」

 その後も、毎週のように先生からは「名言」が連発した。なかでも、私が一番驚いたのはこれだ。

「幼児教育番組は子どもの月齢に合わせて作られているので、見せても大丈夫です」

 言ってること違うじゃん! あれだけテレビ見るなって強調していたのに、何たるご都合主義。じゃあ、最初から言ってくれよ。

 他にも「弊社オリジナルの英語教材がスタートしました。タブレットでお勉強できますよ」と自社のタブレットは宣伝しまくり。あれほど液晶画面は見せちゃいけないと煽っていたのに、いやはや。

 結局、私が幼児教室を辞めたのは、子どもが2歳の時。仲が良かったママ友たちが退会していったからだ。その時には、私自身も幼児教室には飽き飽きしていた。

 早期教育を受けた成果があったのかは、よくわからない。息子は3歳になったが、今のところ群を抜いて成長が早いと感じられる部分はない。
 幼児教室を全面的に否定するつもりはないが、全てをうのみにする必要はない。入会当時の私のように、育児ノイローゼ気味だと、先生の言うことを妄信しやすくなってしまう気がする。

 育児に答えは無い。どこかの「先生」が言うことが必ずしも正しいわけでもない。約1年半の間幼児教室に通って、それがわかったことは唯一の“収穫”と言えるかもしれない。(文=栗原みな)