フジテレビ系歌番組の司会を森高千里と務めたり、情報バラエティー「王様のブランチ」(TBS系)の3代目MCに就任したり。その2代目MCだった谷原章介は「うたコン」(NHK総合)の司会もやっている。渡部はああいう感じになりたかったのだろうか。

 あるいは、美食や美女へのこだわりは中尾彬や石田純一を思わせる。心理学にまで手を出した日には、バブル期に「面接の達人」シリーズで一発当てたトレンディー文化人・中谷彰宏さえ頭によぎったものである。

 もっとも、芸人が別のジャンルに挑戦しながら自分探しをしていくケースは他にもある。たとえば、ボクシングや芸術などにハマっていった片岡鶴太郎がそうだ。ただ、最新のハマりものであるヨガではその執着ぶりを面白がられることも受け入れている。いわば、笑われるのも快感という芸人らしさも感じられるのだ。

 そんな鶴太郎よりも、渡部には芸人らしさが希薄だ。もしかしたら、本人も自分が芸人向きでないことをうすうすわかっていて、戦略的にタレントへとシフトしようとしていたのではないか。

 ただ、それをどこまで意識していたかはともかく、その戦略は瓦解した。最大のミスは、不倫をしてバレたことだが、そもそも、タレント展開のメインにグルメを選んだのも間違いだったかもしれない。美食家キャラは鼻につきやすいからだ。

 渡部同様、爽やかなスマイルとトークで美食を語り、一世を風靡したイケメンシェフの川越達也も、たった一度の失言で消えていった。絶対音感ならぬ絶対味覚を持つと豪語していたが、自分の店への批判に対し「お水にお金がかかるような高級店には行ったことがないはず」などと反論してしまい、ひんしゅくを買ったのだ。

 まして、渡部の場合、ひんしゅくを買ったのは不倫であり、その内容もまずい。特に「多目的トイレ」のくだりは、下品で狡猾、さらには弱者への思いやりのなさといった最悪なイメージをもたらした。それこそ「妻子と外出中、多目的トイレを使ったときに不倫での利用を思いついたのでは」などと想像されてしまうわけだ。

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まったく役に立たなかった「恋愛心理学」