また、彼はたった2、3食のために飛行機で往復するといった日帰りグルメ旅も自慢していたが、それもわずか3~5分というせっかちな逢瀬を思い出させることに。それでなくとも、食事と排せつは結びつきやすい分、美食語りではトイレの話はタブーなのに、もう台無しである。排せつだけでなく、性行為も「下半身」で行うものだから、汚れたイメージが上塗りされてしまった。

 さらに、相手から告発されるという展開は、せっかくの恋愛心理学がまったく役に立たなかったことを意味する。駆け引きの失敗という点では、報道前に活動自粛宣言をするという防衛策も焼け石に水というか、かえって火に油だったという見方もあり、もうグダグダだ。

 とまあ、手の内がすっかり見透かされた(?)ことで、これまで賢そうに見えた分、ダメージも大きい。なんでこんな男をもてはやしていたのかと、世間が気づき、実体のない好感度が作用していたことが垣間見えてしまった。これはベッキーのケースに似ているものの、脱力感はそれ以上である。

 なお、当然ながら、多目的トイレの目的に「性行為」は含まれていない。本来の目的からは外れているわけだ。その構図は、芸人の本分である笑い以外に手を出しすぎ、笑えない状況になった彼の姿に似ていなくもない。

 そんな渡部が今後、芸能活動を再開したいなら、この騒動をネタにして自虐的に笑わせることも必要になってくるだろう。気取ったタイプの彼はそういうことが得意だとは思えないものの、ネット動画を探したら、こんな発言が見つかった。CM(ソーダストリーム)絡みのインタビューで、生後数カ月(当時)の息子との交流について語ったものだ。

「僕、基本的にプライベートはけっこう頭の寝癖とかすごいんで。(略)鳥の巣おじさんってキャラクターがあるんですけど、鳥の巣おじさんだよ、って言って髪をばっと見せると、すごい笑いますね」(オリコンニュース)

 なかなかほほえましいエピソードだ。ただ、赤ん坊と違って、世間はそれくらいでは笑ってくれそうにない。これが小中学生のイタズラとかなら、トイレ掃除で勘弁してもらえるのかもしれないが。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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