器用な芸風がスキャンダルでは裏目に出てしまった渡部建(C)朝日新聞社
器用な芸風がスキャンダルでは裏目に出てしまった渡部建(C)朝日新聞社

 ここ数年、さまざまな不倫が世の中を騒がせてきた。ベッキーのゲス不倫に袴田吉彦のアパ不倫、原田龍二の4WD不倫、矢口真里のクロゼット不倫……。アンジャッシュ渡部建の場合はさしづめ「多目的トイレ不倫」だろうか。

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 報じられた複数の愛人のうち、ひとりとは六本木ヒルズの多目的トイレで逢瀬を重ねていた。一回につき、時間にして3~5分、見返りに1万円を渡していた相手だ。ちなみに、渡部の妻・佐々木希が電話で裁判をちらつかせたという相手もこの女性。また「多目的トイレ」は、この騒動を象徴するパワーワードだ。

 そして、渡部という芸能人自体「多目的」な人だった。グルメに映画、高校野球、恋愛心理学など、さまざまな趣味・特技を持ち、仕事にもつなげる。その姿を「コレクター」的だとする声も耳にしたが、女性に対してもそういうスタンスだったのだろう。

 その活動の幅広さは芸人の枠を超えており、千原せいじはこう評した。

「ちょっとタレントっぽいやないですか、芸人というより」(「あさパラ!」読売テレビ)

 これには、皮肉も含まれているのだろう。実際「芸人」としては中途半端な印象も否めない。その最大の「目的」である「笑い」の部分がいまひとつだったからだ。

 アンジャッシュとしては「すれ違いコント」という鉄板スタイルがあるものの、バラエティーのフリートークでガンガン笑いをとれるコンビではない。むしろ、世間的には相方・児嶋一哉の持ちネタ「児嶋だよ」で知られているのではなかろうか。渡部にも告知を横取りする芸(自分が出てもいない作品を詳しく解説するもの)があり、バラエティーでは重宝されるが、爆笑を生むほどでもない。一種のボケとはいえ、それすらウンチク的なところが、象徴的でもある。 

 そう「世界の渡部」というフレーズがまんざら冗談でもなさそうなほど、彼は気取った存在だった。何本か出ているCMも、コメディー色は薄い。また、ここ数年の動向からは、芸人よりタレントを志向しているふしも見てとれた。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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グルメ王だったことがスキャンダルの「アダ」に