「今のバラエティ界はプレイヤーが15年近く変わっておらず、彼らが面白いと思うアニメやプロレスの例え話に辟易としている視聴者はたしかに多い。また、たけしさんやさんまさんも相変わらず一線からは退かないので、芸人界の新陳代謝が起こりづらいという側面もある。結果、ずっとポジションが変わらない千原ジュニアやケンドーコバヤシ、品川祐などいわゆるひな壇芸人たちが自分らと同世代との共通言語を持ち出し、笑いを取ることで違いを見せるしかなかった。もちろん、彼らも手練れなわけですから、最新の共通言語もアップデートして笑いに取り入れようとする。しかし、どうしても笑いが最大風速になるところは自分たちの共通言語になりがちなので、ここで視聴者は置き去りになる」(同)
■「お笑いビッグ3」が現役でいられる理由
お笑い評論家のラリー遠田氏は、今回の兼近の発言をこう見ている。
「地上波テレビの主な視聴者層は60~70代の高齢者。最も世代別人口が多い団塊の世代も含まれます。この世代は物心ついた頃から家にテレビがあり、テレビとともに育ってきました。タモリ、ビートたけし、明石家さんまの『お笑いビッグ3』世代の芸人がいまだに現役なのは、同世代の視聴者を固定客とつかんでいるからです。また40代以上の人でもテレビを見る習慣がある人の割合が高く、10~30代に比べて人口も多いため、この世代に支持されている同世代の芸人もなかなか勢いが衰えない。ダウンタウンから有吉弘行まで、最前線で活躍している芸人のほとんどがここに含まれます。若者は人口が少ない上に、そもそもテレビを見る習慣がない人が多い。最近では個人視聴率が重視されるようになっていて、若者向けの番組のニーズも高まっていますが、すぐに大きく状況が変わるということはなさそうです。兼近さんの指摘はもっともだと思いますが……」
バラエティの危機を訴えた兼近だが、EXITは4月からABEMA TVでニュース番組のMCに就任した。民放バラエティ番組ディレクターは期待を寄せる。
「ニュース番組のMCという仕事を引き受けたこともそうですが、彼らはお笑い第7世代というブームを冷静に見ていて『このままではダメだ』という思いが強い。だから、チャラ男キャラなのに、あえてニュース番組のMCに就任し、時には真面目に政治や経済やコロナを語ったりもする。つまり、若者のテレビ離れもそうですが、それ以上にEXITとしての立ち位置に危機感を抱いているんです。今回の発言も、生放送のニュース番組で培った“炎上覚悟で物言いをする”というスタンスが表れています。チャラ男キャラで人気を博した彼らですが、実は冷静に未来を見据えているのです」
これからはEXITが中心となって、バラエティ番組を変革させていくのかもしれない。(藤原三星)