外来に来る高齢者にはラジオを勧めているという國松医師。その理由として「映像がないからこそ聞き手に伝えようとしゃべっている」「テレビと違い、(新規感染者数などの)数字が熱心に聞き取らない限り頭に入ってこない」と、自説を展開した。

 テレワークなどによる生活の変化については、「変化に順応できないのを不適応と言いますが、できないだけならいいんですよ。むしろそれを押し殺して過剰適応してしまうことがだめなんです。今はいいかもしれないけれど、いつかくたびれてしまう。急に何か新しいことを始めたり、元気になったりしている人も要注意です」と呼びかけた。

 コロナによって医師に起きた変化についても話題になった。市原医師が「医者は過剰適応してしまっているケースが多くないですか?」と問いかけると、國松医師は大きく頷いた。

「そうです、医者は過剰適応です。正直なところ、ギリギリな先生もいると思います。たとえば『自分もコロナにかかっているのではないか』とかぽろっと漏らしているのであれば、その人の中で質的な変化が起きている。これはエマージェンシーですよ。医者ってエネルギッシュなので、そういう人のうつはかなり危険。周りの人が話しかけないと、その前にウイルスよりも伝播力の強い『不安』がリスクのある人に届いてしまうんですよ」(國松医師)

「医者が変質しているのは感じます。ネットで発信される情報に過剰なストリクトさ(厳格さ)が求められていることも気になります。正義感を背負った“正義モンスター”みたいな医者が、ふだんだったらやらないような、必要以上の取り締まりをしていると感じる場面もある」(市原医師)

 CIAMSであることを自覚したらどうしたらいいか。國松医師は、「いかにして正常な精神状態を保つか、という考えにはアゲインスト(反対)。CIAMS自体は有害ではないので、軽くCIAMSっちゃうのはいいんです。ただその状態が逸脱しすぎるのがよくないだけで、なくすべき対象ではない」とまとめた。

 それを受け市原医師は「CIAMSの後に元に戻るとは限らなくて、変わった状態であり続けるのも適応。コロナ以前に戻るというより、コロナ後によりよい形に安定できたらいいですね」と締めくくった。

(文/白石圭)