そして、手記の終盤にはこう記載されている。

「これが財務官僚機構の実態なのです」「森友事案は、すべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです」「いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。怖い無責任な組織です」

 赤木さんは考え込んでいる時間が長くなり、笑わなくなった。7月、うつ病と診断され、仕事に行けなくなった。12月に大阪地検から電話で事情を聴かれると、病状は急速に悪化していった。自宅でも「玄関の外に検察がいる」「僕は犯罪者や」などと繰り返し、周囲に自殺願望を語るようになった。2018年2月に入ると、「ちくしょう! ちくしょう!」などと言いながら自分の体をたたき続けるようになり、3月7日、命を絶った。

 妻は昨年8~9月、弁護士を通じ、佐川氏に経緯の説明と謝罪を2度にわたって求めたが、「書面を2通とも拝見している。返事はお出しできないが、しっかりと読ませていただいた」という回答があっただけだった。公務災害とは認定されたが、開示された資料は大半が黒塗りでその理由もわからなかった。

 遺族側は提訴の目的として、真相解明だけでなく、「上層部の保身と忖度を目的とした指示で現場の職員が自殺することが二度とないようにすること」「どのような改ざんとうその答弁が行われたのか公的な場で説明すること」を求めるとしている。

 訴訟で最大の焦点となるのは、佐川氏が改ざんを明確に指示したかどうかだ。財務省は2018年6月に公表した調査報告書で、佐川氏が「改ざんの方向性を決定づけた」と認めたが、明確な指示については言及していない。一方、赤木さんの手記は「元は、すべて、佐川理財局長の指示です」と断言。「学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました」と記されている。

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弁護団が発表した妻のコメントには…