赤木さんは7月にうつ病と診断されて仕事を休んだ。11月に検察から任意の取り調べを打診された後は「検察か警察が僕を狙っている」などと話し、自殺願望を口にするようになった。その後、妻に「改ざんは本省の指示なのに最終的に自分のせいにされる」などと繰り返すようになったという。

 国有地取引に関し、「私や妻が関係していれば首相も国会議員もやめる」という安倍晋三首相の国会答弁などを受け、佐川氏が改ざんを発案し、主導的立場から指示した。遺族側はそう主張し、赤木さんに長時間労働をさせたなどとして国に約1億700万円を請求している。佐川氏については、職権乱用は違法性の程度が著しく、公務員本来の職務ではない個人の不法行為で、退職後も妻への経緯説明と謝罪を拒否したとして550万円の賠償を求めている。

 弁護団は提訴に合わせ、赤木さんの手記や遺書を報道陣に公開した。

「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」「責任をどう取るか、ずっと考えてきました」

 手記は、自宅のパソコンに残されたA4サイズ7枚と手書きのメモ2枚。遺書は3通が残され、震えるような手書きの字がつづられていた。

 訴状などによると、赤木さんは社交的な性格で、書道や落語、美術鑑賞などを楽しむ生活を送っていた。働きながら大学を卒業し、友人らには「僕の契約相手は国民です」と話すなど、努力家で公僕としての仕事に誇りを持っていたという。

2017年2月26日の日曜日、その生活が暗転した。

 赤木さんが妻と義母の3人で梅林公園を訪れていた時、上司から「本省からの指示の作業が多いので、手伝ってほしい」と連絡が入った。「上司が困っているから助けに行くわ」。出勤した赤木さんを待っていたのが、改ざんの指示だった。

 妻に「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と打ち明けた。手記にはこう記載されている。

「私は相当抵抗しました」「管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局(の)中村(稔)総務課長をはじめ、田村(嘉啓)国有財産審理室長などから部長ニ直接電話があり、(部長も)応じることはやむを得ないとし、美並(義人)近畿財務局長(に)報告したと承知しています」「美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと部長から聞きました。本省から出向組の次長は『元の調書が書き過ぎているんだよ』と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に違い、差し替えを行ったのです」

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手記の終盤にはこう記載されている…