2次元放射線治療は、がんをX線写真で平面にとらえ、おもに向かい合わせの2方向から放射線を当てる方法だ。これに対し3D−CRTは、CT画像などを使ってがんを立体的に再現し、その大きさや形に合わせて治療装置を多方向から、または回転させながら照射する。がんに線量を集めやすくなり、治療成績が向上した。現在はこの方法が最も多く用いられている。

 これをさらに発展させたのが、2000年ごろに登場した「強度変調放射線治療(IMRT)」だ。通常照射のビームはどこも同じ線量で同じエネルギーを持つが、IMRTでは1本のビームの中で線量に高低差をつけ、場所によりエネルギー量を変える。これを複数本、それぞれ多方向から照射するので、3D−CRTよりずっと複雑な線量分布が描ける。放射線はがんに集まり、正常組織への照射は抑えられるので、治療効果は高く、合併症は少ない。

「とくに、口の中や唾液腺、脊髄に放射線を当てたくない頭頸部や、直腸への照射を避けたい前立腺のがんには有用です。成績向上にも貢献しています」

 と、近畿大学病院の西村恭昌医師は話す。その証左となる研究結果がある。頭頸部がんの一種である上咽頭がんに関する中国の研究で、患者616人をIMRT群と2次元放射線治療群に分け、5年後の局所制御(治療部位に再発がない)率と生存率を比較した。どちらもIMRT群が有意に高かった。IMRTと3D−CRTを比べたインドの試験でも同様の結果が出ている。

■治療期間が短く根治性が高いSBRT

 高精度照射には、ピンポイント照射と呼ばれる「定位放射線照射(SRI)」もある。ごく細いビームを10本ほどがんの形に合わせて多方向から集中させる方法で、1回の治療でがんにかかる線量は3D−CRTやIMRTの数倍になる。そのため治療期間が短く、根治性が高い。

 SRIは、70年頃に海外で開発されたガンマナイフという脳腫瘍専用の照射技術で高い有効性を示してきた。通常の照射装置の性能がよくなった90年代に、これを肺がんの治療にも応用しようと考える医師が現れ、「体幹部定位放射線治療(SBRT)」という手法が生まれた。

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3年生存率はSBRTが95%で手術より高い研究結果も