現在は肝臓がんでも用いられており、どちらのがんでも手術に匹敵する成績を挙げている。

「15年、I期非小細胞肺がんに対するSBRTと手術を比較したアメリカの研究結果が発表され、世界に衝撃を与えました。3年生存率はSBRTが95%、手術が79%で、SBRTのほうがよかったのです」

 と教えてくれたのは、広島大学病院の永田靖医師だ。症例数が少なく、経過観察期間も短いため、これだけで優位性はうたえないが、期待できる結果であることは確かだ。

 IMRTもSBRTも、がんに線量を集め、正常組織にかかる線量を減らす照射法なので混同されやすい。しかし、IMRTは放射線が正常組織にかからないことに、SBRTはがんにかかる線量を高めることに、より重きを置いている。それぞれの特性を生かすため、治療対象になるがんも同じではない。

 こうした高精度照射に欠かせない技術が「画像誘導放射線治療(IGRT)」だ。治療の際にがんの位置が治療計画時とずれていないよう、治療直前や治療中にCTなどで撮影し、確認する。ずれがあれば治療台を動かして修正する。いくら計画が高精度でも、それを実践できなければ意味がないからだ。

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、肝がん、肺がん、頭頸部がん、食道がん、子宮頸がんの臓器別にデータを示して、手術に負けない成績を詳述している。また、日本放射線腫瘍学会の認定施設やがん診療連携拠点病院を対象に調査した、病院別のがん放射線治療の実績を掲載しているので、参考にしてほしい。(文/竹本和代)

≪取材した医師≫
慶応義塾大学病院 放射線治療科 教授 茂松直之 医師
近畿大学病院 放射線治療科 教授 西村恭昌 医師
広島大学病院 放射線治療科 教授 永田 靖 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より