海外に目を向けると、日本で最も有名な“たたき上げ”と言えば、岡崎慎司のかつての同僚FWジェイミー・ヴァーディー(レスター)ではないか。今季イングランド・プレミアリーグで26試合出場19ゴールを挙げ、リーグ3位という快進撃の原動力になっているのだ。2015−16シーズンのプレミア初制覇の奇跡も彼がいなければ叶わなかった。そんな偉大な点取り屋がかつて工場で働いていたというのは有名な話だ。

 シェフィールド出身のヴァーディーの最初の挫折は15歳の時。シェフィールド・ウェンズデーのユースチームをクビになったことだった。8カ月間はサッカーから離れ、その後は身体障害者のための補助器具を作る工場に勤務する。仕事内容は重い原料を高熱のオーブンの中に運ぶというもので、これを1日に何百回も繰り返す。そんな肉体労働に従事しながら、当時8部だったストックスブリッジ・パーク・スティールズでプレーしたが、週給30ポンド(約4000円)とまともにビールさえ飲めない安さだった。

 完全にサッカーで生計を立てられるようになったのは2010年。7部のハリファックス・タウンと契約してからだ。ゴールを量産して6部昇格に貢献すると、5部昇格を果たしたばかりのフリートウッド・タウンに引き抜かれ、2012年5月にチャンピオンシップ(2部)のレスターにステップアップする。この時の移籍金が100万ポンド(約1億3800万円)というから、どれだけのシンデレラストーリーか分かるだろう。そこからのブレイクは説明するまでもないが、イングランド代表に上り詰めた現在の年俸は10億円近いと見られている。

 そういうたたき上げ選手の一挙手一投足を見ることで、コロナショックを少しでも払拭できれば幸いだ。