(イラスト/寺平京子)
(イラスト/寺平京子)

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。病院ランキングだけでなく、治療法ごとの最新動向やセカンドオピニオンをとるべきケース、ランキングの読み方などを専門の医師に取材して掲載している。ここでは、「子宮・卵巣がん手術」の解説を紹介する。

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 子宮の良性疾患において定着している腹腔鏡手術。子宮体がんでも2014年から早期に限り保険適用となり、実施する病院が増えている。腹部を20センチほど切る開腹手術と違って腹腔鏡手術は5~10ミリ程度の穴を開けて手術するので、回復が早い。

 一方、子宮頸がんも18年に腹腔鏡手術が保険適用になった。しかしその後発表された、米国を中心にした子宮頸がんの開腹手術と低侵襲手術(腹腔鏡手術およびロボット手術)を比べる大規模ランダム化比較試験の結果は、低侵襲手術後の経過のほうが劣り、骨盤内の再発率も高いという内容だった。

 これを受けて日本でも新たに安全性を検証する動きがあり、現在は子宮頸がんの腹腔鏡手術をする場合は、日本産科婦人科学会に登録する必要がある。

 子宮頸がんで広く実施される手術は「広汎子宮全摘出術」だ。子宮やその周辺の組織を広範囲に切除する方法で、大がかりな手術となる。日本大学板橋病院の川名敬医師はこう話す。

「広汎子宮全摘出術は、難度が高く医師の技術に差が出やすい」

 広汎子宮全摘出術は、リンパ浮腫や排尿障害といった合併症が出やすい。子宮頸がんの腹腔鏡手術を検討している場合は、必ず主治医に比較試験の結果やその病院の実績を確認したい。

 卵巣がんは術後も約半数が再発する。このため、手術と薬物療法を組み合わせるのが基本だ。再発した卵巣がんの一部に使用が認められていた分子標的薬「オラパリブ」が、19年には初回治療後の再発予防に効果があるとして、使用できるようになった。卵巣がんの一部は遺伝的要因があり、約15%はBRCA遺伝子変異を認め、特に発症の危険が高い。オラパリブを使用できるのは、このBRCA遺伝子に変異がある場合だ。

「卵巣がんに関しては、手術を受ける病院で遺伝子検査や遺伝カウンセリングに対応してもらえるかどうかが、重要になってきています」(川名医師)

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将来妊娠を望んでいるのに子宮を全摘すると言われたら?