カギとなるのが打点部門かもしれない。昨季の坂本は自己最高の94打点。リーグトップは本塁打王のソトで108打点。2位は山田(98打点)、3位に村上(96打点)と続き、坂本はリーグ4位タイだった。得点圏打率.325と勝負強さを見せた坂本だったが、昨季の打順を見ると2番が主(143試合中117試合)で、クリーンナップでのスタメンは計8試合(3番は3試合、4番5試合)のみ。個人の打点だけを考えるとクリーンナップの方が有利だが、今季も原辰徳監督の中では「2番・坂本」が基本軸になるだろう。

 そうなると1番打者がカギか。“後ろ”に丸がいることで、よりストライクゾーンに近いところで勝負してもらえる利点はあるが、打点数を考えると亀井善行と吉川尚輝に加え、重信慎之介、田中俊太、さらには山下航汰といった1番打者候補たちが、どれだけ坂本の前に出塁できるかで坂本の打点数も変わってくる。あるいは岡本がシーズンを通して4番として丸を上回る威圧感を発揮できれば、2番・丸、3番・坂本、4番・岡本の形も面白い。この方が、坂本の打点数は増えるかもしれない。

 いずれにしても、まずは坂本が腰痛に悩むことなく1年間フル稼働すること。コンディションの維持が大きなポイントになるだろう。その点で7月29日から8月8日の間(11日間)に実施される東京五輪の野球競技が心配の種だが、出場国は6カ国で順当にグループリーグを1位で突破すれば、試合数は5試合か6試合程度と多くない。逆にこの五輪期間をうまく利用してリフレッシュすることも可能だ。

 そして何より、坂本にはプロ13年間で積み上げてきた経験がある。投手のデータはすでにインプットされ、体調が崩れた際の対処法、調子を取り戻すための調整法も心得ている。過去を振り返って三冠獲得のためには経験値が必要で、野村克也が30歳、王貞治は33歳と34歳、落合博満は29歳、32歳、33歳、松中信彦も31歳という年齢で三冠王に輝いている。31歳で新シーズンを迎える坂本は、三冠王の適齢期であり、機は熟したと言える。令和初の三冠王誕生へ。その可能性は、十分にある。