プランを書き出したものをもとに、両親や子どもたちなどと情報共有しておいてもいいでしょう。家族が集まるお正月やお盆は、希望を伝えるいい機会となる(イラスト/藤田翔)
プランを書き出したものをもとに、両親や子どもたちなどと情報共有しておいてもいいでしょう。家族が集まるお正月やお盆は、希望を伝えるいい機会となる(イラスト/藤田翔)

 20万部突破のベストセラー『今さら聞けないお金の超基本』(朝日新聞出版)の監修者であり、ファイナンシャルプランナーの泉美智子さん。現在、老若男女を問わず、数多くの方にお金のセミナー・研修を行っています。

 現在発売中の週刊朝日MOOK『定年後のお金と暮らし2020』では、泉さんに取材。定年後を考えて節約や貯蓄、投資をする前に知っておいてほしい「お金の基本」とは何でしょうか。

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 定年を控えた50代の方の中には、「定年後は不安だけれども、何から始めていいのやら」と思う方も少なくないかもしれません。

 たしかに、貯蓄・投資など、やったほうがいいことはたくさんあります。けれども、あれもこれもやらなきゃと、「お金」に対してネガティブな思いをもつのは避けたいところです。

 私は仕事上、小学生の子どもたちに「お金」の話をする機会が多くあります。その際、毎月500円ずつおこづかいをもらって、そのお金を自由に使う練習を授業ですることがあります。

「1月は150円、2月300円、3月200円、4月150円使い残したとしたら、5月は1300円使えるね。そしたら何が買えるかな」と子どもたちに話すと、「500円以上のものが買える! 欲しいものが買える!」と喜びます。ためる楽しさを知るようになります。

 子どもは単純ですが、このお話は大人にも通じるところがあります。

「ためる楽しさ」や「ためる目的」をもつことが大切です。「お金」に対してネガティブに思うのではなく、ポジティブな思いをもったほうがためやすいでしょう。

■知っておきたいお金の六つの機能

 そもそも、定年後に「お金」があっても幸せではないこともあります。

 超一流企業に勤めていた男性で、年金も企業年金もしっかりあって、貯金もたっぷりある家庭です。しかし奥さんからは、うっとうしいといわんばかりの視線を向けられ、家に居場所がないというのです。
 
 また、もう一人も超一流企業に勤め、海外赴任の経験も豊富だった男性です。定年後、町内会の役員を引き受けたり、活動的に動きまわろうとしたのですが、現役時代のプライドが捨てられなかったのでしょうか。まわりの人との軋轢(あつれき)が多くなり、トラブルになった末に、うつ病になってしまったといいます。

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「お金」は「道具」である以上、「機能」がある