■ライフプランを立てて、家族で共有しよう

 そしてもう一つ、ライフプラン(生活設計)を立てることがすごく大切だというお話です。とはいえ、生活設計を立てている人はそう多くはありません。

「生活保障に関する調査」(生命保険文化センター/令和元年)によると「具体的な生活設計を立てているか」の問いに「生活設計あり」と答えた人が37%の一方、「生活設計なし」は55.7%にもなります。

 たしかに近年、景気の良さは感じづらい状況で、手取りは増えず、年金も期待できずの状況です。「しっかり生活設計しなきゃ」というよりも「してもしょうがない」「10年後、20年後を考えてもムダ」といったあきらめにも似た感情があるように思えてなりません。ですが、これは残念なことです。

 現在、50代の人なら、まず10年の長期でライフプランを立ててみることをおすすめします。60歳定年時をはさんで、自分の人生をどうしていきたいのか、お金にどういう変化があるのかを書き出し、具体的にプランを立てるのです。

 その際、自分の子どもの年齢や結婚、出産などのライフイベント、また自分の両親、配偶者の義両親の年齢なども書き込み、いつ、どのくらいのお金がかかりそうかも予測しておきましょう。図に一例をあげてみました。

「資格を取って、定年後の副収入に備えるのに10万円」「62歳のときに父が90歳で上の子が31歳だから、子どもの結婚、出産と父の介護が重なるかな」などと、シミュレーションするだけでも心がまえが異なります。

 プランを書き出したものをもとに、両親や子どもたちなどと情報共有しておいてもいいでしょう。お正月やお盆など、家族が集まった際に、おおまかな現状と、どうしたいかの希望を伝えるのです。そうすることで家族のなかで「お金」について考え、オープンに話し合える機会が増えます。それが「お金」を生かし、豊かな老後の助けになるのではないでしょうか。(文/大田原恵美・編集部)

〇泉 美智子:ファイナンシャルプランナー、子どもの環境・経済教育研究室代表京都大学経済研究所東京分室、公立鳥取環境大学経営学部を経て現職。消費者教育を中心に、全国各地で講演活動を行う。教育テレビ番組「豊かさのものさし」の制作にも携わり、テレビ、ラジオ出演も。環境、経済絵本、児童書の執筆多数。主な著書に『15歳からの経済入門』(共著、日本経済新聞出版社)、20 万部を突破した『今さら聞けないお金の超基本』(監修、朝日新聞出版)などがある。

※週刊朝日MOOK『定年後のお金と暮らし2020』より抜粋