埼玉愛犬家連続殺人事件から25年 冤罪を訴える風間博子死刑囚からの手紙

2019/12/29 11:30

 関根と風間が戸籍上、夫婦でなくなったのは事件の起こった年の1月だ。前年の暮れにアフリカケンネルに税務調査が入り、離婚して不動産名義を風間に移したほうがいい、というアドバイスを弁護士から受けてのことだった。

 この時代、ドメスティック・バイオレンスという言葉は、日本では知られていなかった。結婚以来、風間自身も連れ子である長男も、関根の暴力にさらされ続けてきた。関根には税金対策の偽装離婚と思わせて、風間は実際の離婚に向けて踏み出したといえる。

 アフリカケンネルの共同経営者という立場はそのままに、2人は別居した。関根はこの時期、友人であった高城に「離婚してこのままだと、自分の手元には残るものがない」と漏らすなど、風間の真の意図に気づいた節がある。離れていこうとしている風間を、共犯という軛(くびき)でつなぐために事件に巻き込んだのかもしれない。

 逮捕してからの取り調べで、風間が殺人を唆してきたなどと供述していた関根は、2017年3月、東京拘置所内で多臓器不全のため75歳の生涯を閉じた。

 風間は殺人の冤罪を晴らそうと、再審請求を続けている。1件目の事件発生直後から埼玉県警は関根を疑い、アフリカケンネルの犬舎などを監視していた。2件目の事件当日の行動確認日誌での車両の動きが、風間の供述に一致し、中岡の供述と矛盾しているという内容の第1次の再審請求は2015年、最高裁で棄却された。犬舎の周囲は田畑で見晴らしがよい。中岡の供述では、監視対象のベンツは丸1日以上とまっていたはずだ。それが記録にないのは監視に当たっていた警察官の見落としだとされたのだ。

 風間の再審請求弁護人、内山成樹弁護士は言う。

「私たちが風間さんが殺人に関与していないと確信している大きな理由は、風間さんが殺人の共犯だと言っていた張本人の中岡が、風間さんは死刑になってはいけないと法廷で証言していることです。今後も、再審を勝ち取るべく頑張ります」

 現在、東京高裁で審理されている第2次再審請求は、山上とのトラブルを風間が知らなかったことを裏付ける、取り調べ時の供述だ。

 遺体が、徹底的に解体されてしまったため、新証拠を見つけるのも至難の業だ。だがこの事件の真相が解明されないままで、日本の社会に再びシリアルキラーが現れた時に、捜査当局や司法は正しく対応できるのだろうか。(ノンフィクションライター・深笛義也)

罠~埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった!

深笛 義也

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