風間博子死刑囚から送られてきた手紙
風間博子死刑囚から送られてきた手紙
埼玉愛犬家連続殺人事件の相関図(編集部作成)
埼玉愛犬家連続殺人事件の相関図(編集部作成)
埼玉愛犬家連続殺害事件で捜索する捜査員たち=1995年1月6日(c)朝日新聞社
埼玉愛犬家連続殺害事件で捜索する捜査員たち=1995年1月6日(c)朝日新聞社

 愛犬家ら4人が殺害された「埼玉愛犬家連続殺人事件」で、犬やの繁殖業をしていた関根元と風間博子が1995年1月に逮捕されてから、まもなく25年。証拠隠滅のために、遺体を細かく切り刻み遺棄した異常な手法は「遺体なき殺人」とも呼ばれた。

【風間博子死刑囚から届いたイラスト入りの手紙と事件の相関図】

 2人は死刑判決を受けたが、関根は2017年3月に東京拘置所内で死去。死刑は執行されなかった。裁判で、殺害された4人うち3人で関与が認定された風間は、死体損壊・遺棄は認めたものの殺人罪については冤罪を主張し、再審を求めている。

 ノンフィクションライターの深笛義也は事件を調査し、17年に『罠 埼玉愛犬家殺人事件は日本犯罪史上最大級の大量殺人だった!』(サイゾー)を発表。その後、深笛のもとに風間から手紙が届いた。事件から四半世紀を経ても、いまだ明らかになっていない“事実”とは何か。真相に迫る。

* * *
 死刑囚・風間博子からの手紙が私の自宅ポストに入っていたのは、2019年6月11日だった。風間は2009年に最高裁で死刑が確定している。確定死刑囚は文通や面会などの外部交通権が制限され、親族、弁護士のほか、拘置所が認めた友人に限られている。それは確定前から交流していた者たちで、私はそこには入っていない。驚きながら、手紙を読んでみると、私に対して外部交通権が認められたと書いてあった。

 風間は、小菅にある東京拘置所に収容されている。だが大腸がんにかかっていることが分かり、手術を受けるために5月20日、昭島市にある東日本成人矯正医療センターに移送された。外部交通権などの判断は各施設の施設長に委ねられている。それにしても、私にそれが認められたのは意外だった。センター長がいい人なのかもしれない。

 面会もできるかもしれないと6月17日、東日本成人矯正医療センターに赴いた。2018年に開設されたばかりの真新しい建物。正門は閉ざされ、警備員が立っている。横にある受付に、風間に会いに来たと告げると、運転免許証を確認されて通用扉から中に通された。

 待合室で待つこと、1時間。刑務官が声をかけてきたので「いよいよ、面会できるか」と胸が躍ったが、「こちらへどうぞ」と通されたのは、簡素な応接室だった。

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手術は順調に進んだが…