ヒューマンアカデミーは東京と大阪、佐賀で在日外国人向けの日本語学校も運営しており、数多くの養成講座修了生が採用されて講師を務めています。福井さんにもその選択肢がありましたが、先に面接を受けた都内大手日本語学校の理事長と意気投合し、同校を勤務先に選びました。

「私は中国人とベトナム人が混在している中級クラスを週3日担当しています。授業は午前中と午後の2パターンがあって、私の場合はどちらも4コマずつ担当しています。1コマの授業は45分間で、10分の休憩を挟むので、午前中のパターンでは9時にスタートして12時30分に終わるという流れになります」

 中級クラスでは、文章が読め、仕事で用いる基本的な文書を書けると同時に、社会的な話題についても自分の意見を述べられるレベルを目標としています。

 初級のレベルはクリアしている生徒たちとはいえ、まだ日本語を学んでいる最中の外国人であるのもたしか。それでも、授業は日本語を用いて日本語を教える方式で、英語などを用いたフォローは禁物だそうです。

 また、クラスに属する生徒の現状の能力には、かなりのバラツキがあるといいます。

「すでに母国において難易度の高い日本語能力試験に合格し、日本の大学や大学院をめざしている生徒もいれば、高校を出たばかりで日本語の基礎しか理解していない生徒もいます。片方にレベルを合わせて教えると、もう片方にとっては退屈な授業となりかねません。すべての生徒が興味を抱くような話題を挟むなど、授業の進め方に自分なりの工夫が求められてきますね」

 生徒たちが非常に関心を示した一例が元号の話題でした。令和に改元されたニュースは生徒たちも耳にしており、「そもそも元号とは何を意味し、天皇が代わると改元されるようになったのは明治時代から」というトリビア情報を披露すると、大好評だったそうです。

「私はテレビ大好き人間なので、『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)や『ブラタモリ』(NHK)などといった番組を見ながら、授業で取り上げるネタを探しています」(文/大西洋平)

※週刊朝日MOOK『定年後のお金と暮らし2020』より抜粋

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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