■注目される「松本人志いわく」

 自分の古い話からすると、1993年から週刊朝日編集部で松本さんの連載コラムを担当、それが『遺書』『松本』になった。担当になった時から今まで、ずっと「松本ファン」な私である。というわけで、私なりに「『1人かまいたち問題』とその考察(ファン目線バージョン)」を書いてみる。

 最近の松本さんを見て感じるのは、後輩芸人を盛り立てたいという思いの強さだ。わかりやすいのが、メインコメンテーターを務める「ワイドナショー」(フジテレビ系)。19年10月6日にはどぶろっく(浅井企画)、うるとらブギーズ(吉本興業)が、12月15日には3時のヒロイン(吉本興業)が出演、それぞれがネタを披露した。

 どぶろっく&うるとらブギーズは9月21日に放送された「キングオブコント」(TBS系)で優勝と準優勝に選ばれた2組、3時のヒロインは12月9日に放送された「女芸人No.1決定戦THE W」(日本テレビ系)の女王に選ばれたトリオ。3組が選ばれた番組はフジテレビ系ではないし、ニュースを切り取る番組でお笑いのネタに時間を割くのは異例なこと。2組は松本さんと同じ吉本の所属だが、とはいえ会社ではなく、松本さんの意向が強く働いての出演だと思って間違いないだろう。

 番組でネタを見た松本さんは、3組ともに好意的なコメントをしていた。どぶろっくには「あのネタが空気をガラッと変えたんですよね」、3時のヒロインには「(男性に比べて女性が弱い)ツッコミができていて、期待できると思うよ」。その度にネットニュースが「松本人志」と「どぶろっく」または「3時のヒロイン」を見出しに、記事を配信した。

 松本さんは、発言の一部を切り取るという記事の手法への不満を何度か口にしている。だが、不満を表明したところで記事は出る。であれば、それを前提に動くことは当然。お笑いコンテストで勝った芸人を番組によび、コメントをするのも、優勝という注目に「松本人志いわく」という注目が重なることを意識してのことだろう。

 松本さんの若手への温かい目線をストレートに感じたのは、18年のM-1だった。霜降り明星へのトロフィーを渡した時、松本さんの目に涙が光っていた。「おれ、おっさんやな。泣きそうになってるわ」と照れ隠しする松本さんに、こちらまで涙が出てきた。

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「M-1」審査員のジレンマ