実際、過去の例を見てもタイトルホルダーなど東京ヤクルトの主力外国人の多くが他球団へ流出しており、なかでも巨人への移籍が目につく。

 その例としてまず思いつくのがロベルト・ペタジーニだろう。ヤクルト時代に本塁打王2回、打点王1回を獲得した大砲で、2002年オフに条件面などでヤクルトが契約更新を見送ると、7億円超えとも言われる年俸で巨人が獲得した。

 セス・グライシンガーも忘れられない。『精密機械』と呼ばれる抜群の制球力を誇り、来日1年目の2007年から最多勝に輝き、投球回数数、無四球試合など多くの部門でリーグトップの成績を残したが、オフに1年契約が切れると、巨人があっさりと複数年契約で持っていった。

 そして同じくアレックス・ラミレス(現DeNA監督)。NPB通算13年で2017安打、328二塁打、380本塁打、首位打者1回、本塁打王2回、打点王4回、最多安打3回。球史に残る外国人選手は2007年終了後にヤクルトとの契約交渉が決裂すると、これまた巨人と複数年契約で合意した。

 そして今、ヤクルトファンをどぎまぎさせているのが、ウラディミール・バレンティンの去就だ。本塁打王3回、打点王1回、2013年には60本のNPB年間最多本塁打記録を樹立した長距離砲は守備力の低さやメンタル面での波が指摘されるが、持ち前の強打はいまだ健在。獲得に手を挙げる球団は多いとみられる。

 またバレンティンは今年、NPBでの出場選手登録日数が8年に到達したため、2020年からは日本人選手扱いとなることも大きい。外国人選手枠にとらわれることなく、現場も自由に起用できるのは魅力的だろう。

「バレンティン側もかなり強気な交渉をおこなってくるはず。全体的に衰えが目立つとはいえ、球場の大きさによっては本塁打もある程度見込めます。狭い東京ドームを使う巨人、『ホームランテラス』等を設置しているソフトバンク、千葉ロッテが本命視されるのはそのため。この3チームは資金力もある。千葉ロッテも、2018年の『丸佳浩獲得資金』が貯めてあるともっぱら。東京ヤクルトには資金力が足りない。そうなるとバレンティンの行く先は絞られてしまう」(東京ヤクルト担当記者)

「今までありがとう……」

 ファンからはネット上を中心に、すでに移籍前提の声も聞こえてくる。これまで同様、ヤクルトは『草刈り場』にされてしまうのか。それとも、多くの気まぐれを見せてきたバレンティンがまさかの行動で残留するのか。今年も東京ヤクルトを巡る大型移籍から目が離せそうもない。