千葉大学病院・精神神経科特任助教の大石賢吾医師が、認知症、発達障害に関するあなたの悩みにおこたえします! あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者や家族の身に起きている事態をお聞かせください。採用されたご相談は本連載で紹介します。
千葉大学病院・精神神経科特任助教の大石賢吾医師が、認知症、発達障害に関するあなたの悩みにおこたえします! あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者や家族の身に起きている事態をお聞かせください。採用されたご相談は本連載で紹介します。
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 高齢になると、進行性のもの忘れに加えて、つじつまの合わない会話やイライラの存在もうかがわれ、ときに攻撃性へ転じることもあります。これは認知症の症状なのでしょうか? 千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師が相談に答えます。

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【70代女性Aさんからの相談】一緒に暮らしている夫のことでご相談です。以前から何かと口うるさいタイプだったのですが、ここのところだんだんと、もの忘れが目立つようになってきて、話のつじつまが合わないことも出てきました。事実ではないことに文句を言うこともあって、訂正しようとしてもこちらの話は聞き入れてくれず、怒ると手をつけられません。先日は、そばにあった湯飲みを振り上げて声を荒らげることがありました。電話で子どもに相談したら「認知症かもしれないから病院を受診してみたら」と勧められました。認知症の症状なのでしょうか?

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 二人でお暮らしでしょうか。同居する旦那さまの状態が不安定とのこと。事実と異なることで口論になってしまうといったご負担もある一方で、やはり旦那さまのことをご心配されるご心労が一番かと思います。なかなか思いどおりにならず、自分の時間も思うように取れない中で、献身的に支えようとされていることを思うと素直に敬意を感じます。

 さて、ご相談ですが、旦那さまについての情報をまとめてみたいと思います。おそらく高齢者に該当する男性で、進行性のもの忘れに加えて、つじつまの合わない会話やイライラの存在もうかがわれ、ときに攻撃性へ転じている可能性があるように思われます。

 ほかのご相談と同じように、これらの情報だけでは認知症かどうかは判断できません。しかし、特徴としては認知症として矛盾するものではなく、実際の診療でも似たケースも経験しますので、ぜひ一度、受診してご相談されることをお勧めします。

 これまで本コラムでは、お寄せいただいた相談に沿うかたちで、第2回(2019年4月4日公開)のレビー小体型認知症や第12回(2019年9月19日公開)の前頭側頭型認知症といった種類の認知症について特徴的な症状をご紹介してきたものの、認知症の種類を限定しないかたちでは、第7回(2019年6月20日公開)の被害妄想のみとなっていました。

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大石賢吾

大石賢吾

大石賢吾(おおいし・けんご)/1982年生まれ。長崎県出身。医師・医学博士。カリフォルニア大学分子生物学卒業・千葉大学医学部卒業を経て、現在千葉大学精神神経科特任助教・同大学病院産業医。学会の委員会等で活躍する一方、地域のクリニックでも診療に従事。患者が抱える問題によって家族も困っているケースを多く経験。とくに注目度の高い「認知症」「発達障害」を中心に、相談に答える形でコラムを執筆中。趣味はラグビー。Twitterは@OishiKengo

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