吉永さんは最後の方で「素人とプロのはざまにいるのかもしれない」と言っていた。その心は、「新しいことにあっと思う気持ちは、素人でいたい。現場ではプロでありたい」と。つまり「瑞々しい感受性を持った女優」みたいなこと? 割とシンプルな結論だけど、それで合ってる?

 ハテナが頭にともったので、観にいくことにした。今回の役は、一貫して「末期がんを患った70歳の主婦」だと番組で知った。実年齢と近い。それなら安心だ。

 観客のほとんどがアラ還、またはそれより上に見える女性だった。男性は数えるほどしかいない。「サユリスト」と呼ばれたみなさんは、どこへ? がんばれ、シニア男性! などと、余計なことも思いつつ。

 パンフレットによれば、本家の『最高の人生の見つけ方』を撮ったワーナー・ブラザース本社から「日本のトップ俳優でしかリメイクさせない」という条件が出されていたという。高倉健も亡くなっていて、困ったプロデューサーが「女性2人の話にすれば、日本には吉永小百合という絶対的な映画界のアイコンがいる」と思いつき、そこから企画が動き出した。相手役の天海祐希さんも、吉永さんのアイデア。そう書かれていた。徹頭徹尾、吉永小百合。

 吉永さんは、大学を出てすぐ結婚した専業主婦・幸枝。天海さんは、ホテルチェーンのオーナー社長・マ子。末期がんを患った2人が、難病の12歳の少女が書いた「死ぬまでにやりたいことリスト」を叶えていくというストーリー。「スカイダイビングをする」「ももクロのコンサートに行く」「日本一大きなパフェを食べる」などを、世界と日本で実現していく。

 2人とも、きれいで可愛くほほ笑ましい。だがそれ以上に感じたのが、シニア女性の心をつかむストーリーの巧みさだった。少女が残したリストだから、「ウエディングドレスを着る」という項目もある。それを実現していくうちに、シニア女性のさまざまな願いが叶う。そんな話になっていた。

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浮かんできたのは淡々という言葉