変わらぬ美しさ。吉永小百合 (C)朝日新聞
変わらぬ美しさ。吉永小百合 (C)朝日新聞

 吉永小百合さんが主演する『最高の人生の見つけ方』を観た。実は吉永さんの主演映画を劇場で観るのは初めてだった。敬遠していたのだ。

【写真】和服姿の美しすぎる吉永小百合

 吉永さんの主演映画が公開されると、テレビでCMが大量に放映される。短い予告編ながら、吉永さんの生真面目さと映画にかける思いのようなものが伝わってくる。こちらは不真面目で怠惰な日々を送っているので、己を省みてしまう。しかも、長い時代を描く映画が多い。変わらぬ容姿で20代らしき女性を演じる吉永さんを見ると、どうにも気後れしてしまう。

 にもかかわらず行ったのは、10月末に「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)を見たからだ。題して「吉永小百合スペシャル」。「10カ月に及ぶ異例の密着」だと力説し、あらゆる形容詞をつけて吉永さんを紹介して始まった。「最後のスター」「日本の心」「唯一無二の俳優」「少女のよう」……。

 『最高の人生の見つけ方』の衣装合わせが、密着初日。「思わぬことが起きた」とナレーションが入った。「吉永が、10分だけインタビューを受けるという」。密着取材なのだ、インタビューくらい受けるだろう。でもこの盛り上げが、吉永小百合ということ?

 ところが当の本人は、「自分はプロではない」と繰り返した。自分は不器用だ、周りの方はプロだとも語った。台本と向き合い、体を鍛える。努力の日々が映る。だが、必要最低限のことをしているだけ、努力ではないと語る。

 74歳の吉永さんは、「どこかで幕引きを考えている」とも語った。が、それ以上の熱で、映画への愛とこだわりを語る。「のぼせたら終わり。もう少し、成長したい」。何気ない一言が「名言」となるのも、吉永小百合ゆえか。

 山田洋次監督が登場した。「吉永さんはプロフェッショナルということに一番抵抗を感じる方でしょうね。アマチュアでいたい、プロでありたくないと思っている人だから」と言い切る。監督も太鼓判の「素人願望」。なぜなのだろう。なんなのだろう。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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