前出のメジャー関係者はチーム功労者の引退問題に関して、日米の違いをこう説明する。

「アメリカの場合はチームが一番。いくらチームに大貢献したスター選手でも同じ。引退間際まで試合に出たり、遠征に帯同したりするのは戦力になるからです。特にプレーオフなどの可能性がある場合に、戦力にならない引退予定選手を無理に試合に起用するなど考えられない」

 カル・リプケンJr(元オリオールズ)、やデレク・ジーター(元ヤンキース)などの最終年の成績を見ると納得だ。現役最終年のリプケンは128試合で114安打、本塁打14本、68打点。ジーターは145試合で149安打、本塁打4本、50打点。衰えたとはいえ、かなりの数字を出しているのがわかる。

 上記2人を阿部、鳥谷、福浦と比較するとわかりやすい。阿部は95試合で47安打、本塁打7本、27打点。鳥谷は74試合で19安打、本塁打0本、4打点。福浦にいたっては1試合で0安打、0本塁打、0打点。チーム事情等もあるので単純比較はできないが、成績上のチーム貢献度は明らかに違う。

「鳥谷に関しては阪神退団ですが、推定4億円の年俸から考えると費用対効果が悪すぎる。これまでの貢献度を言う人がいますが、契約はその年ごと。球団、イコール経営者の観点から考えると契約できないのは当然。また、交渉内容の一部をメディアに話していましたが、これは暗黙の了解を破っている。契約交渉過程などを他言しないのは絶対ですからね。どんなにひどいことを言われたとしても、そこは守るべきでした」

 たしかに客観的に見れば、鳥谷の今季成績は二軍選手クラスのものである。日米の交渉方法の違いもあるが、内容を話すのは守秘義務違反にもなりかねない。それが功労者というだけで、どこか許されてしまう空気があるのが日本の野球界だ。

 日米の考え方の違いはあるとはいえ、NPBでの引退、退団予定選手を取り巻く環境は異様な状況であるのは明らかだ。所属球団を含め、周囲があらためて考える時期にきているのかもしれない。