韓国・天安市で日本統治からの解放を記念する「光復節」の式典で演説する文在寅大統領(8月15日)=東亜日報提供
韓国・天安市で日本統治からの解放を記念する「光復節」の式典で演説する文在寅大統領(8月15日)=東亜日報提供

 政府は7月28日、輸出手続きを簡略化できる「輸出優遇国(ホワイト国)」のリストから韓国を正式に外した。韓国は、報復措置としてすでに日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA<ジーソミア>)の破棄を決めている。

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 日韓関係の悪化が始まったのは、昨年10月に韓国大法院(最高裁判所)が日本の企業に賠償を命じた徴用工判決だった。日本政府は判決について、1965年に締結された日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」との“原則的立場”を崩しておらず、打開策は見えない状況になっている。

 安倍晋三政権が「断韓外交」とも呼ばれるほど強気の姿勢で文在寅政権に対応しているのは、日本政府が原則的立場を崩して賠償に応じれば、韓国国内で際限なく賠償請求が続くことになりかねないと考えているためだ。一方、河野太郎外相が「歴史を書き換えることはできないと韓国は理解すべきだ」などと激しい言葉で批判して、不必要に韓国国内の反日感情を高めていることには疑問も多い。永田町関係者は「安倍政権は、北方領土交渉も日米貿易交渉も失敗続きで、それを隠すために韓国叩きをやっているのでは」といぶかる声もある。

■“ウソ”をついて原則的立場が崩された

 嫉妬が渦巻く永田町の「うがった見方」と言えるかもしれない。ただ、事実として安倍政権が韓国以外の国に対しては“原則的立場”を平然と崩していることもたしかだ。

 25日、フランスで会談した安倍首相とトランプ米大統領は、日米貿易交渉で基本合意したことを発表した。そこで安倍政権は、3つの“ウソ”をついた。

 第一は、安倍政権がTPPを離脱した米国と二国間で貿易交渉を始めた時の「TPP以上の譲歩はしない」という説明を守らなかったことだ。米国の関心が高かった牛肉では、TPPと同様に38.5%の関税を9%まで段階的に下げるなどトランプ氏の要求を受け入れた。にもかかわらず、TPPで合意していた日本産自動車への関税撤廃は破棄された。東京大の鈴木宣弘教授(農業経済学)は言う。

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「TPP水準にとどめた」の報道は間違い