――打撃投手にも継投リレーがあるのですね。

山下:先発・中継ぎ・抑えと呼んだりします(笑)。投げる打者数と順番は、打撃コーチが決めています。選手が打ちやすいよう、直球は常時100キロ前後。打者から変化球を要求されることもあります。「ミックス」と選手の間では呼んでいるのですが、ランダムに直球と変化球を織り交ぜることもあり、秋山翔吾選手や金子侑司選手がよくリクエストします。私はスライダーとカーブを、アルバイトの学生キャッチャーからのサインで投げています。

――現役時代の「抑える」から「打たせる」への変化に戸惑いはありませんでしたか?

山下:気持ちの面では大丈夫でしたが、緩い球を投げるのに苦戦しました。それまで全力で投げることしかしてこなかったので、7割の力で投げると、制球が乱れてしまう。現役の時とは逆で、打者が打てずにいると自分のせいではないかと心配になります(笑)。

――打者がベテランだと、余計にプレッシャーがかかりそうです。

山下:中村剛也選手や栗山巧選手に投げるときは緊張します。年上ですし、オーラがすごい。でも投げるとしっかり打ち返してくれるので、あらためてすごい選手だと思います。私は今年で8年目で、打撃投手のなかでは中堅くらいです。40代で打撃投手歴20年ほどの大ベテランもいます。

――打者にぶつけてしまったことはありますか?

山下:これまでに2回ありました。上本達之選手(現西武ブルペン捕手)や星孝則選手(現育成選手)に当ててしまって、すごく焦りました。幸い、上本選手は袖にかすっただけで、星選手も「俺がベースに寄ってたのが悪い」と逆に謝られました。ただ、打撃投手でも死球などでイップスになってしまうケースもあります。ストライクが入らなければ翌年の契約はされません。明日は我が身です。

――大変なお仕事ですね。球団との契約やシーズンオフの過ごし方を教えてください。

山下:年俸制で、会社員の平均よりは僅かですがもらっています。シーズン中は週に1回くらいしか休めませんが、オフの12~1月中旬まで長い休みがあります。オールスターの前後にも休みはあります。

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中島裕之(現ジャイアンツ)から声をかけられ…