岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』、『ワインは毒か、薬か。』など
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』、『ワインは毒か、薬か。』など
地中海食では、多くの果物と野菜を取るのが特徴だ。また、野菜を調理するときはバターやクリームソースは使わず不飽和脂肪酸豊富なオリーブオイルを用いる。酸化が進んでいないエクストラバージンがとくによいとされる(写真:Getty Images)
地中海食では、多くの果物と野菜を取るのが特徴だ。また、野菜を調理するときはバターやクリームソースは使わず不飽和脂肪酸豊富なオリーブオイルを用いる。酸化が進んでいないエクストラバージンがとくによいとされる(写真:Getty Images)

 感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。

 感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説したこの連載が本になりました!『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)カバーは『もやしもん』で大人気の漫画家、石川雅之先生の書き下ろしで、4Pの漫画も収録しています。

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 話はさらにややこしくなる。もしご飯をお腹いっぱい食べたければ玄米食とか五穀米みたいな混ぜものをするとよい。食物線維が増えれば、それはただの「ごはん」ではないからだ。

 西洋での炭水化物と言えばパンとかパスタだ。原料は小麦粉だ。

 小麦粉は大きく2つに分かれる。線維の少ない白い小麦粉と、線維に富んだ茶色い小麦粉(全粒粉)だ。後者は精製していないので白くなく、小麦の胚芽や表皮が含まれている。線維、ビタミンなどがたくさん入っている。

 アメリカの食事ガイドラインでも、白い小麦粉は減らすように推奨しているが、全粒粉ならたくさん食べるように推奨している。全ての炭水化物をいっしょくたに「糖質」でくくってはいけないのだ。もっとはっきり言うならば、糖質か否かは問題ではない。どんな糖質か、が大事だということだ。

 イタリアで行われた研究では、パスタを食べても肥満の原因とはならず、むしろ体重は減少傾向になることがわかったのだ(Pounis G et al. FASEB J. 2016 Apr 1;30(1 Supplement):lb308-lb308)。糖質制限ではパスタ(炭水化物)は肥満の原因になるからよくないと考えられていたので、これも演繹法の「常識」を覆す帰納法の功績だ。

 ぼくのうちにはパスタマシーンがあって、週末によく、子どもといっしょにパスタを作って食べる。パスタ作りにはデュラム小麦という特別な小麦粉を混ぜることが多い。これはグルテンの量が多いパスタ向けの小麦粉だ。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著にもやしもんと感染症屋の気になる菌辞典など

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