「具体的には、名前はすべて下の名前(ファーストネーム)で呼ぶ。強制的な坊主は廃止。コミニュケーションを取るため、LINEのグループも作った」

ーー「出会い頭」の捉え方次第で人間関係は変わる。

 高校生は多感な時期であり、思春期と成長期の真っ只中だ。日々、多くのことが変化する中で、生徒たちに向きあうのは苦労の連続のはず。そこで永井が大切にするのは、チームは家族という考え方だ。

「大学にくらべて高校の監督は自由、休みがない。グラウンド外も含めてやることがある。正直、シンドイこともあるけど、それを埋めてくれるのはやっぱり生徒。キレイごとに聞こえるけど、本当にそう」

「生徒には限られた時間しかない。だからとにかく一緒になって戦うこと。1日でも長く一緒にいたい。今年は無理そうだから、次の代に期待している、では話にならない。完全には無理だと思うけど、仮に負けても納得できるようにしたい」

「チームは家族。3年生は長男で1年生は三男。監督は父親だし、若いコーチは兄貴。家族なら付き合い方も分かると思う。上が下を大事にして育て、下は上を敬う。そういうことが自然にある関係性を築きたい。だから、おれは敵じゃない、とも言った。生徒は監督を選べない。それならば出会ったことをどう捉えて、そういう関係性になるかだと思う」

ーー「真剣勝負」の経験を一発勝負に生かす。

 高校と大学では異なることも多い。とくに3年生にとって最後の夏は負ければ、即高校野球からの引退が待っている。大会前ピリピリした緊張感が漂う中で感じたこともある。

「夏の大会前に感じたのは周囲の支え。学校全体が時間を割いてサポートしてくれる。全校応援もしてくれる。他の人たちが自分のために時間を使ってくれる。それは普段、生活している中ではなかなかないこと。だからこそ、学校関係者、他の生徒、地元の人など、みんなに心から応援されるチームにしたい。普段の態度が悪ければ、負けちまえ、と思う人も出てくる。そうなっては意味がない。それこそが野球を通じての人間形成じゃないかなって」

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「人間理解」が選手のポテンシャルを引き出す