また高校野球に身を置いてみて初めて感じた大学野球の素晴らしさ、があったともいう。

「大学はリーグ戦なので、シーズン中は週2回の公式戦ができる。これは練習試合では味わえない真剣勝負。高校の公式戦はトーナメントだから、負ければそこで終了。公式戦での戦いが選手を大きく成長させてくれる。監督として公式戦の試合数はかなり積んできた。そこでの経験を高校の一発勝負でも生かしていきたい」

ーー「人間理解」が選手のポテンシャルを引き出す。

 自身、多くの監督、指導者と接してきた。その中でも大きな影響を受けたのがメッツのボビー・バレンタイン監督(当時)だった。MLBではワールドシリーズ出場経験があり、千葉ロッテでは05年日本一になった。

「大学の監督になった時、ボビーに会った。『チームのトップに立つ時には人を知れ。プレーだけではなく、その人自身を知ることが結果につながる』と言われた。それを忘れないようにしている」

 メッツ時代、永井監督に密着したドキュメンタリー番組が作られた。生徒たちに自分自身をわかってもらうため、見せたこともある。

「27歳くらいの時の番組。いつかは高校野球の監督をやってみたい、と語っていた。それから20年近く経って、実際に生徒たちと同じユニフォームを着ている。いろいろな人たちに支えられてきた。良い出会いも多かった。やっぱり縁は大事」

「プロになりたかった。でも夢は叶わず30歳前には髪を金色にしてアメリカへ行った。だからお前らも好きなことはやってみろ、と言う。常に一瞬、一瞬で手を抜かない。そうすれば誰か見ている人がいて、助けてくれる。それが縁だと思う」

 大事にするのは人、そして縁。

 生徒からは得ることばかり。試行錯誤を続ける日々において、ボビーの教えを常に忘れない。

 甲子園で結果を残し、多くの選手を育ててきた名監督は何人もいる。彼らは間違いなく「成功」をおさめたと言えるだろう。しかし永井監督が目指すものは、少し趣が異なるようにも見える。

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“とにかく熱い男”の挑戦に注目