※写真はイメージです (Getty Images)
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症状がひどいときには、毎日大量の皮膚が剥がれ落ちる…。
症状がひどいときには、毎日大量の皮膚が剥がれ落ちる…。

「ガサガサ、ガサガサ」

【大量に剥がれ落ちた皮膚の写真はこちら】

 剥がれた皮膚が落ちないように縛っていた袖口のゴムを外すと、服の中から大量の白いかさぶたが落ちた。かき集めると、すぐに両手がいっぱいになる。服を脱ぎ、かさぶたで覆われた全身を鏡ごしに見つめる。家に帰っておこなう日課のひとつだ。

 外を歩けば、異様なものを見るかのような周囲の視線にさらされることもある。

「私は妖怪なんだ」

 佐藤唯華さん(31)は心を閉ざすようになった。

 「乾癬」(かんせん)は罹患すると、皮膚にでる円形の赤みの上にかさぶたができ、やがてフケのようにはがれ落ちる。皮膚の免疫機能の異常による病気で、ストレスや脂っこい食事、肥満といった要因が加わって引き起こされると考えられている。国内では千人に1人が患者とされている。細菌やウイルスによるものではないため人にうつることはないが、症状が外見に出ることから、社会での差別に苦しむ人は多い。モデルの道端アンジェリカさんや、音楽クリエーターのヒャダインさんも患者であることを告白して話題となった。

 佐藤さんが発症したのは小学4年生のときだ。佐藤さんは男子たちのグループに混ざって外で遊ぶ活発な女の子だった。ある日、母親に「フケが出てるよ」と言われた。「洗髪が足りなかったかな」と思ったが、痒みと白いかさぶたは次第に額や腕にまで広がっていった。

 異変に気付き、皮膚科を受診した。

「治療を続けましたが、症状はひどくなるばかりでした。かゆみが強くなり、集中力が続かない。学校の授業中、額から剥がれ落ちた皮膚をノートからなんども払い落しました」

 最初は周囲の友人や教師たちも「大丈夫?」と気遣ってくれた。好きだった夏の水泳の授業にも、以前と変わりなく参加できた。周囲の態度が一変したのは、中学のときだ。

「見た目を気にする年頃だからか、別の小学校から進級してきた男子からいじめを受けるようになりました。『きもい』と教科書に落書きされ、机には『怪物』『ぶつぶつ』と彫られました。友達の輪に入れず、『グループを作って』という先生の言葉に毎日怯えていました。修学旅行でも班から置いて行かれ、一人で奈良を周ったときはつらかったです」

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「皮膚病が来るな!」浴びせられる心無い言葉