「私の病気を受け入れてくれて、気持ちが楽になれました。剥がれた皮膚のせいで頻繁に詰まってしまう風呂の排水口を、何も言わずに掃除してくれました。私の隣で寝ていて、朝起きた時に、夫が体中フケだらけになってしまった時には『オレ、竜田揚げじゃん!』って笑い飛ばしてくれるんです」

 反対されるのを恐れ、交際を報告できずにいた夫の両親にも、症状が治まったことで会うことができた。病気でためらっていた結婚も、8年の交際を経てようやく踏み切れた。

 治療法が確立されはじめ、罹患した著名人が病気を告白したことで、乾癬への認知度は高まりつつある。しかし、患者はいまだに多くの負担を強いられている。「佐藤さんが快方にむかっているのは、幸運なケースです」と話すのは、患者同士の交流の場をつくるなど、病気についての知識を広める活動をしているNPO法人東京乾癬の会P-PATの大蔵由美理事長だ。

「治療費の補助が国から出るのは、主に指定難病に罹患した場合か、生活保護受給者です。乾癬が重症化して寝たきりになり、生活保護の対象になったことで治療を受けて再就職するも、高額な医療費を払えず再び重症化するという負のスパイラルにはまってしまう人もいます。乾癬で国の指定難病となっているのは『膿疱性乾癬』だけ。全身の関節に腫れや痛みを伴いやがて変形する『乾癬性関節炎』を指定難病に加えるよう厚生労働省に要望し、指定の拡大を目指していますが、実現には至っていません」

 精神的な負担に加え、経済的負担も重くのしかかる。患者の回復には、医療の発展だけでなく、社会全体の理解が欠かせない。(AERA dot.編集部/井上啓太)