報道を受け、タテルは9月に調査委員会を設置。調査委は昨年末、350件の不正を認定し、過度なノルマとパワハラが背景にあったとする調査結果を発表した。

 調査委によると、不正は上場前の10年ごろからあった。やめようとする動きもあったが、結果的にはマスコミに報じられるまで、自ら不正を断ち切るには至らなかった。

 タテルが不正を働いた相手は、西京銀行(山口県周南市)が多い。西京銀とは出資したり行員を派遣されたりする近しい間柄だったのに、である。

 朝日新聞が取材した事例では、残高10万円以下だった顧客のネットバンキング画面が、600万円超あるかのように偽造されて西京銀に提出された。これは一連の問題発覚後、西京銀から連絡を受けて判明した。つまり、タテルは資料の偽造を客には伝えず、勝手にやっていたことになる。

■食い違う銀行への説明

 では、なぜ「偽造」が必要だったのか。調査委の報告書では、その点が触れられていない。

 タテルは、自己資金が乏しくても投資できる、と顧客を勧誘した。前出の顧客も「20万円前後で大丈夫」とタテルの営業マンから言われていたという。

 しかし、これは銀行への説明とは違う。

 西京銀に提出した資金計画では、諸費用だけで数百万円の自己資金を客が払うことになっている。物件価格のすべてを融資してもらおうとしても、認められずに融資額が9割前後にとどまることもある。そうすると、払うべき自己資金はさらに増える。

 銀行が顧客のネットバンキング画面などを提出させるのは、そうした自己資金を払える資力があるのかを確かめるのが目的だ。

 タテルは「自己資金が少なくても大丈夫」と客を集め、実際に自己資金の乏しい客もいた。一方で、銀行には数百万円の自己資金があると示さないといけない。そこでタテルは、ネットバンキング画面を偽造して銀行を欺く蛮行に及んでいたのだ。

 では、実在しない「自己資金」はどう捻出されたのか。この点も、先の調査委は明らかにしなかった。

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不正を許した金融機関の責任は?