だが、7回以降は1安打無失点と立ち直り、河埜和正の同点ソロで2対2の引き分け。巨人はマジックを「5」に減らした。「負けたら自分のせいかも」と悩んでいた平光球審がホッとしたのは言うまでもない。

 ファインプレーでゲームセットと思いきや、審判の妨害で一塁セーフになり、1点を失うアクシデントが起きたのが、91年5月11日の巨人vs阪神甲子園)。

 巨人の先発・斎藤雅樹は、阪神打線を8回まで5安打2失点に抑える好投。だが、7対2とリードした9回、オマリーと八木裕に安打を許し、2死ながら一、三塁のピンチを招く。次打者・ウインの当たりも、二塁ベース寄りの外野へ抜けようかという難しいゴロだったが、ショート・川相昌弘が追いついた。川相は勢い余ってつんのめりそうになりながらも、リズミカルな動きで送球体勢に入った。

 ところが、これでゲームセットと思われた直後、なんと、プレー確認のため前進してきた橘高淳二塁塁審が前に出過ぎて、川相と衝突。プレーを妨害された川相は一塁に送球できなくなり、この間に三塁走者・オマリーが3点目のホームを踏んだ。ウインには遊撃内野安打が記録された。

「難しい打球をうまく捕れたのに、審判が目の前にいて、投げられなかった」と川相は残念そう。交錯した際に左わき腹を強打してうずくまるなど、踏んだり蹴ったりだった。

 一方、川相が二塁に送球すると思って前に出てきた橘高塁審は、「(川相が)思った以上に後方で捕球した。瞬間、一塁に投げるんだと思ったが、遅かった」と申し訳なさそうに説明した。

 これが1点を争う緊迫した場面だったら、大もめにもめるところだが、点差が開いていた余裕か、巨人側は“大人の対応”で抗議はなし。斎藤も冷静さを失うことなく、次打者・金森永時(栄治)を一ゴロに打ち取り、今度は本当のゲームセットになった。

 本塁を全力で駆け抜ける走者の前に審判が立っていたことから、まさかの激突事故が起きたのが、91年8月11日のヤクルトvs巨人(東京ドーム)である。

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