「『紅白』は依然40%前後の高視聴率を維持しているとはいえ、年寄りにとってはゴールデンボンバーも『女々しくて』だけの企画物バンドにすぎないし、若者にすれば氷川きよしですら「ズンドコの人」でしかなかったりする」

■ゴールデンボンバーとの共通点

 音楽シーンにおける世代間のズレを表現してみたわけだが、じつは今どき、畑違いの世代に認知されているだけでもすごいことだ。そして、演歌における氷川がそうだったように、Jポップにおいて「キワモノ」として世に出て、それを貫くことで生き延びているのがゴールデンボンバーである。たとえば、このバンドは平成の次の元号が発表された翌日「うたコン」で新曲「令和」を披露した。一方、氷川も改元初日に「きよしの令和音頭」を自身のラジオで初オンエア。売れるため、楽しませるために何でもやるという貪欲さと柔軟さが共通している。

 そして、こうした貪欲さや柔軟さはヒットソングを生むうえで重要なことだ。つまり、芸能界においては「キワモノ」こそ「王道」でもあるのだ。おそらく、氷川は途中でこの真理に気づいたのだろう。最近の姿からは、デビュー当時の照れくささのようなものがまったく感じられない。

 それゆえ、今回のヴィジュアル系ロック化という展開も不思議ではないのだが、なぜ、このタイミングだったのか。そこには、演歌界の勢力図の変化が関係しているだろう。

 ここ数年、山内恵介や竹島宏、さらには純烈といったイケメン系の台頭があり、必ずしも氷川一強とは呼べなくなってきた。が、本来、彼の「ルックス」力は群を抜いており、4年前にもそれを思い知らされた。一般人のツイッターで、こういうものを見かけたのだ。

「そういえば今日、CDショップ行った時に入口に明日発売のポスター飾ってて『あぁ、タキツバ新曲出したんやなぁ』って思って家帰ったら、ヒルナンデスで氷川きよしが新曲の宣伝してて、タキツバやと思ってたポスターが氷川きよしと発覚した」

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