りんたろー。(左)と兼近大樹のコンビ、EXIT
りんたろー。(左)と兼近大樹のコンビ、EXIT

 若手芸人が売れるための手段の1つとして「キャラで売れる」というのがある。ほかの芸人との差別化のために、目立ちやすい何らかの「キャラ」を背負うことで、世間に注目されるというものだ。

 この作戦が成功してキャラが認知された芸人は、しばらく経つとバラエティ番組でそのキャラに反する別の一面があると暴露されたりする。「ワイルドな男」のキャラで世に出たスギちゃんが、ワイルドではない小心者の素顔をばらされる、などというのが典型的なパターンだ。キャラをいったん身にまとい、あとからそれを脱がされるというのは、これまでにも多くの若手芸人が通ってきた道だった。

 ところが、最近、キャラを打ち出してそれを脱がされるという二段階をかつてないほど速いペースで済ませてしまった異色の芸人がいる。チャラ男漫才師のEXITである。EXITはりんたろー。と兼近大樹の二人組。2人とも「チャラさ」を売りにしていたのだが、テレビに出始めた瞬間から、それをあっさりと脱がされてしまった。そして皮肉にも、それこそが彼らが注目されるきっかけになった。

 2018年7月に放送された「ゴッドタン」の若手芸人を紹介する企画で、EXITは「今のバラエティで売れそうな若手芸人」1位として登場した。服装と言葉遣いがチャラい感じのチャラ男漫才を演じていた。

 だが、レギュラー出演者であるおぎやはぎと劇団ひとりは彼らに質問を投げかけ、あっという間に彼らのチャラくない真面目な素顔をあぶり出してしまった。「チャラ男」というキャラが認知されるより先に、「実は真面目」という素顔の部分の方にスポットが当たったのだ。

 ここから人気に火が付き、多くのバラエティ番組に出るようになった。りんたろー。はもともと私生活でもチャラい一面はあるのだが、老人ホームで介護のアルバイトをしていたこともあり、根は真面目な好青年である。相方の兼近は酒も飲まないしタバコも吸わない。女遊びどころか恋愛経験も少なく、そもそもチャラいところのない人間だった。ベビーシッターのアルバイトをしていて子供好きの一面もある。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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