岡村隆史(左上)、今田耕司(右上)、又吉直樹(左下)、徳井義実(右下) (c)朝日新聞社
岡村隆史(左上)、今田耕司(右上)、又吉直樹(左下)、徳井義実(右下) (c)朝日新聞社

 バラエティ番組で女性芸人が恋愛や結婚について語るのはありふれた光景である。特に、独身の女性芸人は自分がモテないという自虐ネタで笑いを取ることも多い。また、モテないだろうと思われていることを逆手に取って、あえて上から目線でいい女ぶったりするという「逆張り」もいまや常套手段の1つである。

 一方、独身の男性芸人が結婚のことを話すことはそれほど多くはない。過去の女遊びや恋愛について話すことはあるが、結婚そのものについて深く掘り下げた話をすることはほとんどない。その理由の1つは、女性芸人と違って男性芸人には恋愛や結婚の話をすることがそもそも求められていないからだ。また、男性芸人は普段からそこまで深刻に結婚のことを考えていない、というのもあるだろう。

 彼らがバラエティ番組で独身をネタにするときには「いい年して結婚できない男」という分かりやすいポジションに立ち、自虐的なことを言うしかなかった。今田耕司だったら「極度の潔癖症だから結婚できない」、岡村隆史だったら「女性恐怖症なので結婚できない」などという話に落ち着く。バラエティ番組ではそれ以上の掘り下げた話はできないので、求められる役割をやっていればそれで十分なのだ。

 5月4日に放送された『さよなら!アローン会』(NHK)は、その一歩先を狙った意欲的な番組だった。「アローン会」とは、独身の男性芸人の集まりだ。主なメンバーは今田耕司、岡村隆史、徳井義実、又吉直樹である。彼らは普段からLINEグループで交流したり、飲み会を開いたりしているという。彼女ができたり結婚したりした場合には、この会を抜けることになる。

 この番組では、4人が集まって、独身生活や結婚について改めてじっくり語り合うことになった。アローン会の存在自体は以前から彼らによってテレビやラジオで語られていたが、1つの番組で大きく取り上げられるのはこれが初めてのことだ。

 NHKが制作していることもあって、バラエティ番組ではあるが内容は真面目なものだった。又吉が高級老人ホームを訪れて、そこでの生活をレポートするという企画もあった。売れっ子芸人である彼らは恐らく、お金には不自由しない生活を送っている。そんな彼らにとって、設備が整った高級老人ホームに入るというのは、きわめて現実的な選択肢の1つなのだろう。そのVTRを食い入るように見つめている彼らの姿が印象的だった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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