2009年は大学にとってエポックメイキングな年となった。大学進学率が初めて5割を超えたことだ。だが、その世代の半分以上が進むようになった大学が二極化してしまった。歴史と伝統があり学生が集まる人気大学、実績がなく定員割れを起こす地方大学である。

 この年、私立の高知工科大が公立大学となった。それ以降、公立化した大学は10校ある。地方都市で定員割れの私立大学が公立になることで、その地域から若い世代の流出を防げるばかりか、外から若い人たちが入ってくる。大学は経営難を乗り切り、地元の自治体は活気づく。両者の利害は一致していた。

 2012年、田中真紀子文科大臣が大学3校の設置を不認可とした。のちに認可され、田中大臣の場当たり的な対応はずいぶん批判される。だが、大臣の「大学が多すぎる」という発言に共感を覚える大学関係者は少なくなかった。大学の数が800に届きそうな現状に、大学の役割を見直す声が政財界からあがってきた。

 2014年、経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦が、文科省の有識者会議でG(グローバル)型大学、L(ローカル)型大学の構想を打ち出した。トップ校はG型として世界をめざしてもらう。残りの多くは職業訓練校にすべきという趣旨で、経済・経営系学部はマイケル・ポーターの戦略論ではなく簿記・会計、会計ソフトの使い方を教える。法学部は憲法ではなく道路交通法を教え、大型第二種免許を取得させる、などの意見だった。

 2016年、37年ぶりに医学部、18年には52年ぶりに獣医学部が作られた。獣医学部新設をめぐっては国会で安倍晋三首相を交えた論戦が繰り広げられた。

 2019年には、専門職大学が開校した。前年の設置審査において多くの専門職大学が準備不足で認可されず、大学経営のあり方が問われた。

 平成の幕が降りようとするいま、大学の増え方はバブルっぽさを示しており、大学進学率も高くなる見込みだ。だが、平成初期の金あまりバブルとの対比でいえば、いまは、奨学金を借りた学生が返済できず苦しんでいる。自己破産したケースもあり、かなり深刻な状況だ。

 新しい時代になって、大学が良くなるのか、学生が学びやすい環境を作れるのか。大学や国が取り組まなければならないことは山のようにある。(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫