3月17日の清水エスパルス戦からは前川黛也が代役GKとしてゴールマウスを守っていたが、4月6日の松本山雅戦では彼のミスから2失点。今季J1昇格組の格下にまさかの苦杯を喫した。その時点で西は「ファンマ監督に何かあるかもしれない」という雰囲気を感じていたという。続く広島戦でも4失点して「守備崩壊」と言える状況になったところで、リージョ監督が本当に辞任してしまう。キム・スンギュが試合に出続けていたら、この結末は回避できたかもしれない。

 とはいえ、神戸下部組織出身の小川が「僕は試合に出てなかったですけど、外から見ていて危なっかしい場面はすごく多かったし、『よくやられなかったな』と思う場面もあった。もっと細かいところを突き詰めていかないと『J1制覇』という高い目標は達成できないと感じていた」と神妙な面持ちでコメントしたように、守りの混乱はGK変更によるものだけではなかった。リージョ監督はバルサ流を推し進めるために攻撃練習に比重を置いていて、守備組織構築にまで手が回らなかったのが大きかったようだ。

 例えば、中盤は山口蛍の個人能力で何とかバランスを取っていた部分があった。「アンドレスやルーカスの運動量の少なさをカバーする意味で自分が神戸に呼ばれたところもある」と山口蛍は自覚を口にし、幅広いエリアを動いて攻守両面に絡んではいたが、彼1人だけで守り切れるほどJ1は甘くない。リージョ監督にしてみれば「ボール回しを完成させてから守りに着手しよう」という思惑があったのかもしれないが、クラブ側はそこまで待てないという判断をした。そのあたりは気がかりな点だ。

 実際、外国人指揮官や選手が日本のサッカーに適応するのは容易なことではない。顕著な例が、2014年のセレッソ大阪だ。2010年南アフリカワールドカップMVPのディエゴ・フォルランを鳴り物入りで招聘し、注目度が飛躍的にアップしたものの、チームは序盤から低迷。1年間でランコ・ポポヴィッチ、マルコ・ペッツァイオリ、大裕司と3人の監督が率いることになり、最終的にJ2降格という最悪のシナリオを余儀なくされている。

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避けたいセレッソの二の舞