オードリーの春日俊彰 (c)朝日新聞社
オードリーの春日俊彰 (c)朝日新聞社

 4月18日放送の『モニタリング』(TBS系)で、オードリーの春日俊彰が結婚を発表した。以前から交際が噂されていた一般人の彼女に、番組の企画で公開プロポーズを行うことにしたのだ。この日のために春日はピアノの猛特訓を行い、彼女の前で生演奏を披露した。ゆずの2人の歌に合わせて『栄光の架橋』を弾いてみせた。

 その後、春日は用意した手紙を読み上げて、彼女に指輪を差し出し、プロポーズをした。彼女は笑顔でそれを受け入れた。

 その後、セットに隠れていた相方の若林正恭が神父の格好で突然登場したのだが、春日を驚かせる立場であるはずの若林はまさかの大号泣。鼻水を垂らして涙を流していて、仕掛け人としての務めを果たせていなかった。これには相方の春日も苦笑いを浮かべるしかなかった。

 春日は特殊な芸人である。いや、正確には芸人という既存の肩書に当てはまらない存在なのかもしれない。春日は「春日」というジャンルのタレントである。主な仕事は「春日であること」だけだ。

 春日が今の外見になったのは、相方である若林のプロデュースによるものだ。会話が噛み合わない漫才を演じるために、若林は春日の得体の知れなさを強調しようとした。服装は白のシャツにピンクのベスト。髪型は八・二分けのテクノカット。漫才で舞台に出るときには胸を張ってセンターマイクまでゆっくり歩く。

 話を進めようとする若林に対して、春日は空気を読まずに茶々を入れる。その都度、若林はツッコんだり無視したりしながら、何とか話を展開させようとする。今の私たちが知る春日というキャラ芸人は、若林によって生み出されたと言っていい。

 ただ、それが成立したのは、もともと春日がちょっと変わった人だったからだ。若林の語るところによると、春日は芸人になってから一度も努力らしい努力をしたことがないのだという。ネタはすべて若林が考えていて、春日はただそれに乗っかるだけ。コンビとしては何年も売れない状態が続いて、若林は日々苦悩していた。だが、何度か解散を持ちかけても、春日は無感情に「任せる」と答えるだけだった。「がんばろう」とも「解散しよう」とも言わず、コンビの命運を100%相方に委ねていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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