最終回では、2週にわたってハワイロケが行われた。中居とゲストMCを含む出演者たちが常夏の地ではしゃぎ回っていた。山里だけはだまされてほかのメンバーよりも1日遅く現地入りして、スカイダイビングで登場する羽目になった。

 最後は酒を飲みながらメンバーが番組への思いを語ることになった。乾杯の前、中居がしんみりとした口調で切り出した。

「私はこの7年半の間、いろんなことがありました。あんまり具体的に自分の口では言えないこともありました。人間って、人って思う通りに生きていくことができないことも改めて感じました。再会を切に思うこともあります。何やってるのかなあ、どうしてるのかなあ。長い長い付き合いをした仲間っていると思います」

 中居が、あの「仲間たち」に対する思いをにおわせるようなことを語り始めたのだ。思わず神妙な顔つきになる共演者たちを前に、彼はこう続けた。

「僕は切に思うんです。再会っていうね。僕にとってはあるんです。僕はこの再会を切に願うために、僕の口から言うのも、すごくあれですけども。そんな乾杯でもいいんですか。たぶん見てると思うんですよね。じゃあ、再会を切に願って。『ナカイの窓』、そしてリミテッド、そしてアンタッチャブルの再会を願って乾杯!」

 中居が再会を願っていたのは、陣内智則がかつて組んでいた「リミテッド」と、山崎弘也が組んでいる「アンタッチャブル」のことだったのだ。その場にいた陣内も山崎もあきれながらツッコむしかなかった。

 冗談を交えながらも、この番組に対する中居の思い入れが深かったのは間違いがないようだ。この後、中居はゆっくり噛みしめるように「でもね、『ナカイの窓』ね……楽しかったのよ」と口にした。その言葉を聞いた山里と陣内は目をうるませていた。

 番組のエンディングで流れたのは、SMAPの『オレンジ』だった。この選曲にも作り手からのあえて言葉にしないメッセージを感じることはできる。

 中居は、アイドルでありながらバラエティ番組を自らの主戦場と位置づけ、MCとして成長を続けて現在の地位を築いた。そんな彼はいまや芸人からも尊敬される一流の司会者になった。『笑っていいとも!』で共演したタモリをはじめとする偉大な先人たちから学んだ「バラエティの魂」を中居は受け継いでいる。

『ナカイの窓』にファミリー感が感じられる理由。それは、そこに中居正広がいたからだ。(ラリー遠田)

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら