ナカイの窓にゲストMCとして出演していた山里亮太 (c)朝日新聞社
ナカイの窓にゲストMCとして出演していた山里亮太 (c)朝日新聞社

 一昔前のバラエティ番組には「ファミリー感」があった。同じ番組に出ているというだけで、レギュラー出演者たちの間に仲間意識のようなものがあり、それが視聴者の側にも自然に伝わってきた。メンバー全体を擬似家族のような集団として温かく見守るという図式があった。

【写真】中居正広が絶賛した女性アーティストはこちら

 だが、最近ではそういう番組が減っている。番組を作るための予算や時間が限られていて、出演者同士が番組を通して深い関係を築くのが難しくなっているからだろう。『笑っていいとも!』『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ×2イケてるッ!』といったフジテレビの主要なバラエティ番組が立て続けに終了したあたりから、ファミリー感のある番組はほとんどなくなってしまった。

 3月27日に最終回を迎えた『ナカイの窓』(日本テレビ系)は、今どきの番組にしては珍しく、「ファミリー感」がある貴重な番組だった。

『ナカイの窓』という番組の企画自体は、決して目新しいものではない。中居正広がMCを務め、その補佐役として「ゲストMC」と呼ばれる芸人が日替わりで出演する。毎回テーマごとに違ったゲストが集まり、中居とゲストMCと共に円卓を囲んでトークを展開する。「ゲストMC」というシステムだけはやや特殊だが、基本的にはシンプルな形式のトーク番組である。

 この番組に毎週出ているのは中居ただ1人だ。レギュラーが固定されているわけでもないのに、ファミリー感があるのは不思議な感じがするかもしれない。その秘密を解く鍵は中居にある。端的に言うと、中居という人間の「器」がファミリー感を生み出しているのだ。

 中居は番組の冠を背負いながらも、この番組では表向きには進行をしない。段取りはゲストMCに委ねて、自らトークの輪に加わり、ゲスト陣の話を巧みに引き出していく。

 ゲストMCとして出演する人の大半は、中居よりキャリアの浅い芸人たちである。中居は、彼らに対して一見すると冷たい態度をとることがあるが、実はそれも愛情の裏返しである。芸人側も百戦錬磨のMCである中居から多くを学んでいる。

 スタジオでトークをする通常回以外にも、たまにロケに出たり、ドッキリ企画が行われたりする回があった。裏番組に出ていた山里亮太が復帰するときのドッキリ、陣内智則がトラブルを起こして降板させられそうになるドッキリなどは特に印象的だった。そのとき、中居が怒っていると聞かされていた山里がビクビクしながら中居に歩み寄ると、中居は笑顔になって山里を抱き締めた。そのネタバラシの瞬間、山里は感情を揺さぶられて目に涙を浮かべていた。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
次のページ