少し解説してみよう。

 序盤で先発投手が崩れる。しかし、それが2~3点なら、いや、4~5点差でも、西武打線ならひっくり返すだけの力は十分ある。つまり、ビハインドの展開で2~3イニングをつなぎ、まず試合の流れを落ち着かせる。そこから逆転機を見いだす。そのための“ブリッジ役”の投手が、森脇のような存在になってくるというわけだ。

「試合を壊さないように、その点差を守って、我慢して、辛抱していれば、西武打線はいいですから、あとで十分ひっくり返せるんです。勝ちを拾っていけるんですよ」

 オリックス・渡辺正人スコアラーも同様の見方だった。チームの「ストロングポイント」と「ウィークポイント」の両方を、現場もフロントもきちんと把握している。だからこそ、フロントは的確な補強に動き、現場側はその与えられた選手を的確に配置することができる。

 森脇の直前の七回に登板したのは、昨年のドラフト1位左腕の齊藤大将。サイドハンド気味のサウスポーは昨オフ、豪州のウィンターリーグにも参戦して試合経験を重ね、リリーバーとしての成長を見せている。この日も打者4人に対して、二塁打1本を許しながらも、残る3人はすべて三振に斬って取った。

「齊藤にしても、森脇にしても、複数イニング、投げられるじゃないですか? ちゃんと、まとめられるんですよ」と渡辺スコアラーは強調する。だからこそ、26歳とルーキーとしては年齢の高い森脇のような「即戦力」を獲ってきて、この役割にはめ込んでいくわけだ。ここからのキャンプ終盤からオープン戦にかけては、こうした実戦テストが繰り返されていくことになる。

 その森脇も課された役割と自らの持ち味をしっかりと理解していた。

「緊張はしなかったですね。(球が)荒れることは、これからもないと思います」

 飄々とした冷静な自己分析に、ルーキーらしからぬ落ち着きが見えた。

「これから実戦の中で、出てくる課題を1つずつ、つぶしていければと思います。僕もそんなに若くないですから、できることから1つずつ、やっていかないと。ストレートの威力とか精度とか、あるじゃないですか。でも、バッターが打ち損じていても、イメージ通りの球で打ち取ってなかったり、そういうところでのミスマッチを埋めていけるようにしていきたいんです」

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場面を想定して取り組む森脇