そう言って、森脇は対外試合のデビュー戦で三者凡退に打ち取りながらも、その中身に少々、不満点があることを挙げ、それをきちんと自分の言葉で説明してくれた。

「1人目、2人目、フォークで打ち取っているんですけど、もうボール1個分、落ちていれば、三振が取れたんです。これも(投げる)ラインは合っているんですが、落ち切っていないんです。だから、バットに当たってしまう。これが例えば、1死二、三塁の場面で内野が前身守備なら(ゴロが)抜けているわけですからね。打たせたらいけない場面も出てくるでしょうから」

 ルーキーなのに、自分が使われる場面をすでに細かく想定しながら投げている。先発でもなければ、ストッパーでもない。分かりやすい立場ではない。それでも、試合を壊さず、持ちこたえるための“ブリッジ”としての役割や、負け試合で勝ちパターンの投手を使わず、終盤の2~3イニングを無難にまとめて、試合を終わらせる「敗戦処理」という役割は、チームとしては絶対に必要な「ワンピース」なのだ。

 それが、自分なんだから──。ルーキーながら、その自覚がある。菊池雄星がポスティングシステムでマリナーズへ移籍。エースが抜けたからこそ“総力”でその穴を埋める必要がある。宮崎・南郷から、高知・春野に場所を移しての2次キャンプでは、5日間のうち4日を練習試合に費やしている。ここで2019年の戦いに必要な戦力をふるい分けていく。それだけ重要な場なのだ。

「弱くなったと思っていないんですよ、このチーム。浅村が抜けた打線の方もそうですよ」という渡辺スコアラーの指摘は、投手陣と同様、新たな“2019年型打線”が着々と整備されているという警戒信号でもあった。

 それがいきなり機能したのが、2月23日のロッテ戦でのことだった。(続)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。