そもそもトップ下でストライカー寄りの南野が台頭したのも左サイドから多くのチャンスを生み出せる中島の存在が関係している。右の堂安にしてもドリブルや個人での打開力はあるが、本来はもっと三人目の動きや飛び出しをメインにするアタッカーだ。それが現在は中島がやっていた役割を多少なり右サイドからしなければいけなくなっている。

 中島に代わり左サイドでスタメンを担う原口元気はインサイドで起点になるタイプの選手ではないが、チームの攻撃リズムを作るためにインサイドに寄ってきてしまうところがある。すでに1点をリードした状況でカウンターを繰り出せる展開になれば原口や右で伊東純也といった選手が生きてくるし、南野も仕掛けからフィニッシュに持ち込みやすくなる。

 しかし、チームの立ち上げ時から中島ありきの攻撃だったところにそのキーマンがいなくなればメカニズムにひずみができるのは当然だ。そこをうまく埋める存在として期待された乾貴士も限定的な起用法にとどまっている。このアジアカップはとにかく現在のメンバーで勝ちに行くしかないが、今後は中島を欠く状況も想定したプランを準備して行く必要がある。

 例えばトップ下に香川真司や鎌田大地のようなチャンスメークに優れる選手を加えることは1つの解決プランかもしれない。あるいは中盤の形を変えることで中島でない選手でもサイドに起点を作りやすくなる。アジアカップを総合的に検証する中で、そうした戦術的な見直しに応じたメンバー構成を考えて行くべきだ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。